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自社に適した株式報酬の選択基準は?法務税務的観点での判断軸をご紹介します | ESG Times

企業の役員報酬設計の中で、役員に株式を授与する株式報酬を導入する企業が近年増加しています。

一方で株式報酬には様々な種類があり、株式報酬の導入を検討しているものの種類が多すぎてどう選べば良いかわからない、と陥ってしまいがちです。

そこで、この記事ではそのような方に向けて選択基準となる法務税務的観点での判断軸をご紹介していきます。

株式報酬の種類

まずは株式報酬の種類を整理して見てみましょう。

株式報酬には下表のように様々な種類があります。ここではまず法務税務的観点での判断軸の異なるフルバリュー型値上がり益型とで分けて整理します。

フルバリュー型とは享受できる経済的利益が株価と連動するものを指します。報酬の計算方法は、「売却時の株価 × 株式数」となります。この型は成熟企業と相性が良いです。

値上がり益型とは享受できる経済的利益が株価の上昇額に連動するものを指します。報酬額は(売却時の株価 ー 基準となる株価)× 株式数で計算することができます。この型は成長企業と相性が良いです。

ここからはフルバリュー型、値上がり益型それぞれで、報酬設計の判断軸となることがらを見ていきます。

フルバリュー型株式報酬選択の判断軸

まずはフルバリュー型の判断軸です。主要なものとしては、以下のようなものがあります。

  1. インサイダー取引規制適用の有無
  2. キャッシュアウトの有無
  3. ダイリューションの有無
  4. 条件成就前の株主権の有無
  5. 行使価格払込みの必要性
  6. 発行手続きを含む諸手続きの必要性
  7. 発行会社側損金算入の可否
  8. 業績条件付加の可否
  9. 外部者への費用支払い
  10. 会計上のインパクト
  11. 被付与者側での税務
  12. 労基法24条の考慮

導入の際にはこれらの法務税務的観点での判断軸などに照らし合わせて最適な株式報酬を選択する必要があります。

値上がり型株式報酬選択の判断軸

値上がり型株式報酬選択の主要な判断軸には以下のようなものがあります。

  1. インサイダー取引規制適用の有無
  2. キャッシュアウトの有無
  3. ダイリューションの有無
  4. 行使価格払込みの必要性
  5. 発行手続きを含む諸手続きの必要性
  6. 業績条件付加の可否
  7. 発行会社側損金算入の可否
  8. 会計上のインパクト
  9. 被付与者側での税務
  10. 労基法24条の考慮

フルバリュー型と同様、導入の際にはこれらの法務税務的観点での判断軸などに照らし合わせて最適な株式報酬を選択する必要があります。

法務税務的観点での判断軸の詳細

ここまでフルバリュー型と値上がり益型の報酬選択それぞれの判断軸を一覧で紹介しました。

ここからは、各の判断軸についての詳細を見ていきましょう。

インサイダー取引規制適用の有無

換金の必要があるものに関しては、インサイダー取引規制の関係上、換金のタイミングについて考慮が必要となります。

キャッシュアウトの有無

株式報酬の中には会社からのキャッシュアウトが存在するものとそうでないものが存在するため、特に前者については会社のキャッシュ状況と合わせて考慮する必要があります。

ダイリューションの有無

株式報酬の中には、自己株式数を除いた発行済株式総数が増加するものとそうでないものが存在するため、前者についてはダイリューションを考慮する必要が出てきます。

条件成就前の株主権の有無

フルバリュー型株式報酬においてはこの項目の考慮が必要となります。フルバリュー型株式報酬のうちRSについては条件成就前に株主としての権利を受領できてしまう設計のため、その考慮が必要となります。

行使価格払込みの必要性

株式報酬の種類によっては、行使時に金銭の払込みが必要となるものが存在するため、その工面について問題とならないか考慮が必要となる場合があります。

発行手続きを含む諸手続きの必要性

株式報酬の種類によっては、金融証券取引法上の発行開示手続きや会社法上の発行手続き、株主総会特別決議などが必要となるなど手続き的負担が重いものが存在するためその考慮が必要です。また、特に海外居住者への手続き負担が軽くなるものも存在する(SARやファントムストック)のでその点も考慮が必要となります。

発行会社側損金算入の可否

この項目はまず、平成29年度の税制改正以前の決議かどうかによって損金算入の条件が変わります。それぞれの条件において、各株式報酬は損金算入されるのかどうかを検討する必要があります。

業績条件付加の可否

株式報酬に業績条件を付加することによって一定の業績向上インセンティブとしての機能も持たせるという設計をすることが理論上可能となっており、その検討をすることができます。

外部者への費用支払い

株式報酬の中には、信託報酬の負担や専用口座管理に関する費用負担など外部者へ大きな費用支払いが発生するものがあるのでその点を考慮する必要があります。

会計上のインパクト

株式報酬の中には、費用計上が増加することによって会計上の利益を圧迫するものがあるためその点注意が必要となります。特にフルバリュー型の場合は業績条件の未達や株価上昇といった事象による影響によっても会計上のインパクトが変わるのでその点も検討が必要となります。

被付与者側での税務

株式報酬の種類によって課税タイミングが異なるため、納税資金の工面の面などから考慮したり先んじた実務上の対応が必要となりえます。

労基法24条の考慮

従業員が被付与者として含まれる場合、労基法24条1項に抵触しないよう注意する必要が出てくるため、株式報酬の種類によっては注意が必要となります。

自社に適した株式報酬を選択しよう

株式報酬の設計は、役員のインセンティブ設計や維持、ひいては企業成長のために最良の設計を模索すべきものです。

一方でその他にも法務税務的観点の最適性を抜かしてはならず、ここまでご紹介した様々な判断軸を加味して設計することが必要となります。

弊社ではご相談も承っておりますので、株式報酬にご興味がございましたらお問い合わせページからお気軽にお問い合わせください。

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