サイトアイコン ESG Times

エネルギーミックスとは?現状と2030年・2050年の展望を解説 | ESG Times

エネルギーミックスとは

エネルギーミックス(Energy mix)とは、私たちが使う電気を複数の発電方法を組み合わせてつくること。「電源構成」とも呼ばれています。

日本のエネルギーミックスを構成する発電方法

日本のエネルギーミックスを構成する発電方法は以下の通りです。カッコ内の数値は、2018年の割合になります。

火力(77%)

原子力(6%)

再生可能エルギー(17%)

役割による各エネルギーの分類

エネルギーミックスを構成する発電方法は、その役割によってベースロード電源、ピーク電源、ミドル電源の3つに分類されています。

ベースロード電源(原子力、石炭火力など)

ピーク電源(揚水式水力、太陽光、風力など)

ミドル電源(天然ガス火力など)

出典:電気事業連合会「電源のベストミックス」

東日本大震災以降、ベースロード電源は原子力に代わって石炭火力が主力となり、ミドル電源である天然ガス火力の稼働も増えています。その結果、エネルギーミックスにおける火力発電全体の割合が押し上げられています。

エネルギーミックスが必要な2つの理由

エネルギーミックスが必要な理由は、大きく2つあります。

理由1:複数の発電方法を組み合わせ「3E+S」に

エネルギーミックスを構成する発電方法には、それぞれ得手・不得手があり、どれ一つとして完璧なものはないため、複数を組み合わせる必要があります。

たとえば火力は安定的に稼働できる反面、CO2などの温室効果ガスを排出。逆に太陽光発電などの再生可能エネルギーは不安定ですが、温室効果ガスを抑えられます。こうした特性を補完させあうことで「3E+S」を満たすエネルギーミックスを目指します。

「3E+S」は、日本のエネルギー政策の基本となる考え方です。

とくに「Safety」は東日本大震災の原発事故を受け、「3E」を支える大前提に位置付けられるようになりました。

理由2:リスクに備えて調達先を分散

出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2020」

エネルギーミックスが必要なもうひとつの理由が、リスクに備えて原料の調達先を分散することです。

2018年の日本のエネルギー自給率は11.8%。OECD諸国では、ルクセンブルクに次ぐ下位2番目です。大部分を輸入に頼っている日本は、できる限り調達先を分散させておく必要があるのです。

石油依存のエネエルギーミックスから脱却した歴史

資源エネルギー庁によると、1973年当時のエネルギーミックスは70%以上が石油火力。原料の大部分を、中東から輸入される石油に頼っていました。しかし同年10月に第4次中東戦争が勃発。日本は「石油ショック」と呼ばれる供給ひっ迫・価格高騰にみまわれ、ひとつの調達先に頼るリスクの大きさが明らかになります。

2018年のエネルギーミックスにおける石油火力の割合は、7%まで低下しています。しかし石油は燃料や化学製品など発電以外の用途に広く使われており、中東からの輸入に頼る状況は変わっていません。

中東は政情不安定な地域が多く、2019年6月にはホルムズ海峡で2隻の石油タンカーが襲撃を受けました。襲撃犯の正体は明らかになっていませんが、この直後に原油相場は4%上昇しました。

中東におけるシーレーン(海上交通路)の安全保障は、エネルギー輸入大国の日本にとって今なおネックとなっています。

エネルギーミックスはLNG火力主流から「脱炭素化」へ

現在、火力発電の主流は天然ガス火力となり、エネルギーミックス全体でも最多の38%を占めています。天然ガスは、大部分がLNG(液化天然ガス:Liquefied Natural Gas)の状態で輸入されています。

LNGは、天然ガスをマイナス162℃で冷却して液化したもの。液化することで体積が気体の約600分の1になり、タンカーによる大量輸送や、基地での貯蔵がしやすくなります。

調達先も石油のように中東に偏っておらず、世界各地に分散しています。オーストラリア、マレーシア、カタールなど、政情が安定した国から輸入できることもメリットです。

出典:東京ガス「おどろき!なるほど!ガスワールド」

LNGは他の化石燃料と比べてCO2などの温室効果ガスの排出量が少なく、石炭を100とした場合の排出量は57(石油は80)。しかし少ないとはいえ、温室効果ガスを排出する点は変わりません。

世界的な取り組みとなっている地球温暖化・気候変動対策の観点から、化石燃料を使用する火力発電は割合を減らしていく必要があるのです。日本政府の「エネルギー基本計画」も、「脱炭素化」(化石燃料からの脱却)を目標としています。

「エネルギー基本計画」が示す2030年のエネルギーミックス

「エネルギー基本計画」は、日本のエネルギー政策の土台となる計画です。

2003年の「第1次エネルギー基本計画」から3年ごとに見直しが行われ、2018年に策定された「第5次エネルギー基本計画」は、2030年の目標となるエネルギーミックスを以下のように示しています。

出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2020」

このように火力発電への依存を減らし、再生可能エネルギーの「主力電源化」を目指すなど、脱炭素化を強く意識したエネルギーミックスとなっています。

「地方創生」からも期待される再生可能エネルギー

将来の主力電源に位置付けられる再生可能エネルギーは、脱炭素化だけでなく「地方創生」の側面においても期待されています。

たとえば環境省が提唱する「地域循環共生圏」。これは「ローカルSDGs」とも呼ばれ、各地方の地域特性を活かしながら経済、環境、社会をバランスよく発展させる構想です。その中で「自立分散型のエネルギーシステム」として、再生可能エネルギーの活用を掲げています。

日当たりの良い地理条件なら太陽光、森林資源が豊富ならバイオマス、河川や水路が多いなら水力など、それぞの地域には特有の再生可能エネルギーがあります。これらを活用した新しい発電事業を中心に、雇用の創出や地域経済の振興を目指します。

地方レベルで再生可能エネルギーの利用が増えれば、エネルギーミックスの脱炭素化にもつながります。こうした「経済と環境の好循環」を生み出すため、環境省は地方自治体や企業、金融機関、NPOなど、さまざまなステークホルダーに「地域循環共生圏」への参加を呼びかけています。

「パリ協定」を受け「カーボンニュートラル」を目指す

2030年に向けたエネルギーミックスの背景にあるのが、2015年9月に国連で採択された「パリ協定」。これは世界的な地球温暖化・気候変動対策の指針となるもので、以下のような目標を掲げています。

日本は温室効果ガス排出量を2030年までに2013年比で26%、2050年までに80%の削減を目指しています。菅義偉総理大臣は2020年10月の所信表明演説で「2050年までのカーボンニュートラル」を宣言しました。

「カーボンニュートラル(炭素中立)」は、再生可能エネルギーの利用拡大や省エネによって温室効果ガス排出量を抑えた上で、森林や海洋による吸収で相殺し、プラスマイナスゼロにすること。「パリ協定」の「排出量を実質ゼロにする」と同じ意味です。

2050年のエネルギーミックスに向けて

2050年のエネルギーミックスについて、日本政府は具体的な割合を示していません。「第5次エネルギー基本計画」でも、80%削減を目指すために「あらゆる選択肢を追求」とあるのみです。

2030年の26%からたった20年で80%削減というのは野心的な目標で、まだ実現策は見えていません。エネルギーミックスが示されないのは、無理もないことです。

しかし日本は中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで5番目に温室効果ガスの排出量が多く、国際社会に対する削減の責任があります。

大幅な削減には、2030年からさらに飛躍した脱炭素化が必要です。再生可能エネルギーをエネルギーミックスの主力電源にするには、イノベーションも求められます。

これらの実現に向けた技術開発と、取り組みを進める企業や研究機関へのESG投資が、ますます重要になるでしょう。

モバイルバージョンを終了