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ジェンダーギャップ指数とは?世界ランキングや日本の男女格差の課題を解説 | ESG Times

ジェンダーギャップ指数とは?

男女の違いにより生じる格差のことを、ジェンダーギャップと言います。

このジェンダーギャップの大きさの度合いを、経済活動や政治への参画度・教育水準・出生率や健康寿命などから評価し算出したものを、ジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index: GGI)と言います。

ジェンダーギャップ指数は世界経済フォーラム(WEF)が2006年のダボス会議で創設を決め、以来年に一度国別・項目別の指数とその世界ランキングを公表しています。

発足の背景としては、近年男女の平等格差が開いていることを問題視したことにあります。

ジェンダーギャップ指数以外の男女格差を示す指数

ジェンダーギャップ指数以外にも、男女格差を評価する指数は存在します。

代表的なものとしては、ジェンダー開発指数(Gender Development Index: GDI)とジェンダー不平等指数(Gender Inequality Index: GII)があります。

ジェンダー開発指数とは、人間開発における男女格差を示す指数で、男女別の人間開発指数(HDI)の比率で表されます。各国のGDIランキングは男女平等からの絶対偏差で表されるため、男性優位の男女格差も女性優位の男女格差も同じ扱いでランキングに反映されます。

ジェンダー不平等指数は、国家の人間開発の達成が男女の不平等によってどの程度妨げられているかを明らかにするものです。評価項目としては、妊産婦死亡率・国会議員の女性割合・中等教育以上の教育を受けた人の割合などがあります。

ジェンダーギャップ指数の計算方法

ジェンダーギャップ指数は、政治経済教育健康の4分野に関して、合計14の項目を以下の方法で計算することで算出します。

まず各評価項目に対して「女性÷男性」の値を計算することで項目別の指数を算出します。例として「識字率」の項目を計算する際には、女性の識字率が60%、男性の識字率が80%の場合、識字率の指数は60%/80%=0.75になります。 

男女の格差が小さいほどこの指数は1に近づき格差が大きいほど0に近づきます

また、指数は1を越えることもあります。例えば、「健康寿命の男女比」では女性の方が男性よりも寿命が長いため、世界平均でも指数は1を越えています。

そして計算された14項目の指数をまとめることで、その国の総合スコアを算出します。

ジェンダーギャップ指数ランキング

2019年12月ににWWFが発表した「Global Gender Report 2020」にて公表された世界ランキングの上位10国と主要国の順位は以下の通りとなっています。なお、順位は指数が計算されている153か国の中でのものとなります。

順位 国名 指数
1 アイスランド 0.877
2 ノルウェー 0.842
3 フィンランド 0.832
4 スウェーデン 0.820
5 ニカラグア 0.804
6 ニュージーランド 0.799
7 アイルランド 0.798
8 スペイン 0.795
9 ルワンダ 0.791
10 ドイツ 0.787
15 フランス 0.781
19 カナダ 0.772
21 英国 0.767
53 米国 0.724
76 イタリア 0.707
81 ロシア 0.706
106 中国 0.676
108 韓国 0.672
121 日本 0.652

世界最上位は例年北欧の国々が占めています。各国間で差のつきやすい「政治的エンパワーメント」「経済的参加度および機会」で北欧諸国は軒並み高いスコアを叩き出しており、これが北欧諸国の高順位の理由であると言えます。

特に11年連続で首位を獲得しているアイルランドは女性の社会進出が活発で、国会議員と内閣の4割が女性、さらに過去50年間のうち女性首相の在任期間は21.9年間と、女性の政治参加が非常に進んでいることがわかります。

一方で、世界経済を牽引する米国は53位となっています。アメリカでは管理職や専門職は4~5割が女性ですが、国会議員や内閣は女性割合が3割に届かず、女性の大統領もこれまでに誕生していないことから、最先端の北欧諸国に比べたら女性の進出には未だ改善余地があると言えます。

さらに日本は153か国中121位と、2020年版では過去最低順位となっています。女性の国会議員は10.1%、閣僚は5.3%で、女性首相も誕生していません。この水準はかなり低く、政治分野に限ると日本より不平等な国は9か国しかありません。

日本のジェンダーギャップの課題点

日本の ジェンダーギャップ指数の世界ランキングは121位と主要7か国(G7)では最低、日本自身としても過去最低の順位となっています。

日本の男女格差改善のための取り組みは政府をはじめとした様々な主体によって行われています。

代表的なものとしては、2003年に男女共同参画推進本部によって「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待」するという目標が掲げられ、2005年にはそれが閣議決定されています。

しかし現在その目標期限となる2020年、依然日本の順位は低く、目標達成とは程遠い状態であると言えます。日本の課題はどこにあるのでしょうか。

分野別にランキングを見ると、日本が先進的である分野と課題としている分野は明確に分かれています。日本の項目別順位とスコアは以下の表の通りです。

(経済分野)項目 日本
順位
日本
スコア
世界平均
スコア
経済(全体) 115 0.598 0.582
労働力率の男女比 79 0.814 0.661
同種業務での給料格差 67 0.672 0.613
勤労所得の男女比 108 0.541 0.499
幹部・管理職での男女比 131 0.174 0.356
専門職・技術職の男女比 110 0.680 0.756
(教育分野)項目 日本
順位
日本
スコア
世界平均
スコア
教育(全体) 91 0.983 0.954
識字率の格差 1 1.000 0.899
基礎教育在学率の格差 1 1.000 0.757
中等教育在学率の格差 128 0.953 0.954
高等教育在学率の格差 108 0.952 0.931
(保健分野)項目 日本
順位
日本
スコア
世界平均
スコア
経済(全体) 40 0.979 0.958
出生率の男女比 1 0.944 0.925
健康寿命の男女比 59 1.059 1.034
(政治分野)項目 日本
順位
日本
スコア
世界平均
スコア
政治(全体) 144 0.049 0.239
国会議員の男女比 135 0.112 0.298
閣僚の男女比 139 0.056 0.255
過去50年の国家代表の
罪人年数の男女比率
73 0.000 0.190

日本の男女格差が他国に比べて大きい項目は、政治分野経済分野であると言えます。

経済分野の遅れの原因としては、女性の社会進出に対しての見方の文化があります。

日本には女性が企業の中で指導的地位に立つことに否定的な文化が根付いています。ウーマンポリティカルリーダーズ(WPL)の2018年の調査によると、企業トップを女性が務めることに好意的な印象を抱く人の割合は、日本ではわずか24%にとどまります。比較対象としてアメリカは63%です。

この文化は、女性の仕事進出を妨げる大きな一因となっています。

また、経済格差の要因として日本の女性が無報酬の家庭内労働に費やす時間が、男性の4倍以上であることが挙げられます。これにより、有給の仕事に従事する時間が減ったり、労働時間を増やすのが困難になったりするため、キャリア形成や昇進の機会が奪われていると考えられます。

また、政治分野でも女性トップに対する悪印象の文化が原因となっています。

女性がトップや指導的立場に立つことに否定的な文化は企業という枠組みにとどまりません。結果として、そのような文化を持つ国民の投票により決まる政治家には、女性はなりにくい側面があります。

国家文化的な背景が、経済面や政治面を中心に日本の男女格差を根深いものにしています。

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