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SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは?企業の取り組み事例まで徹底解説 | ESG Times

ひと昔前の日本は「男とはこうあるべきだ」「女ならこうあるべきだ」といった固定観念が根強く、その型に合わないと「男のくせに」「女のくせに」と平気で口にしていたものです。

しかし、今の時代にそんなことを言ったら「パワハラ」「モラハラ」と訴えられてしまうでしょう。ハラスメントですべて片づけることはよくないですが、世界は確実に性別にこだわらない社会形成を目指しています。

そこで今回は性別に関わるSDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」を解説していきます。時代に取り残されないようにジェンダーのことを理解しましょう。

SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」を意味する言葉で、2015年9月に開かれた国際サミットにて策定されました。SDGsは2016年から2030年にかけて世界が解決すべき課題について、17の目標と169のターゲットを用いて表記しています。

SDGsは前身のMDGs(ミレニアム開発目標)で足りなかった先進国の協力を促し、発展途上国とともに貧困やジェンダー・環境問題に取り組むことを約束しました。SDGsのスローガンは「誰ひとり取り残さない(leave no one behind)」で世界が一体となることを強調しています。

SDGsの国内認知度

SDGsへの取り組みは日本にとっても重要なアピールポイントとなります。そこで問題なのはSDGsが国民に浸透しているかどうかです。2020年12月にアンケートサイト「アイリサーチ」が行ったSDGs認知度調査(図1)によると、「名前を聞いたことがある」と答えた人の割合は51.9%でした。

しかし、SDGsの内容まで知っている人に範囲を狭めると割合は27.8%まで下がります。日本がSDGs大国となるためには国民1人ひとりの意識改革が鍵となるかもしれません。

図1 SDGsの年代別認知度 
出典:「MarkeZineニュース」

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とは?

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」というテーマのもと、9個のターゲットから構成されています。

ジェンダー問題は1979年12月に国連総会で採択された「女性差別撤廃条約」に見られるように世界に根強く蔓延る問題の1つです。条約に加盟した日本やアメリカ・イギリスといった先進国、ギニアやカメルーン・南アフリカ共和国といった発展途上国ともに女性蔑視の風習が残っています。

SDGs5では「女性の生活を保障すること」や「女性の政治的地位の向上」などにスポットを当て、現状打開に取り組むことが目標となります。

SDGs5のターゲット

SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」には9個のターゲットが記載されています。ターゲットとは目標を達成するための具体的な指標で、国として何をすべきかを導くものです。

この記事ではSDGs5の9個のターゲットをまとめて記載するので、企業としてSDGs5の取り組みを考えている方はぜひご覧ください。

ナンバー ターゲット内容
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性および女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女子に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4 公共のサービス、インフラ、および社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6 国際人口開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ、および土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b 女性のエンパワーメント促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでのエンパワーメントのための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する。
出典:「Global Compact Network Japan」

SDGs5で注目されるLGBTとは?

ジェンダー平等を目指すためには「セクシャルマイノリティ(性的少数者)」に対する世間の理解も不可欠です。特に国際社会で話題に挙がることの多い「LGBT」はしっかり押さえておきましょう。

LGBTは以下の4つの言葉の頭文字を取った単語です。

そもそも「ジェンダー」とは社会的・文化的に形成された性別のことで、最近は生まれながらの性別に捉われない柔軟な環境作りが求められています。今はまだ反対意見もありますが、SDGs5を通して見直されることが期待されます。

SDGs5を取り巻く現状

SDGs5のジェンダー平等を達成するには未だ解決すべき課題が山積している状態です。例えば、世界中で形成される社会は「課せられる責任」「負うべき活動」「意思決定の機会」に関して女性が不利な立場に置かれています。

企業や就学の場でも女性は「女らしく」を強要されることが多く、本来の力を発揮できずに苦しむ女性も少なくありません。このような慣習は長きにわたり世界で根付いたもので、変革には時間がかかると考えられています。

SDGs5を取り巻く現状(世界)

SDGs5について世界に目を向けると、先進国と発展途上国の間で改善度合いに開きがあることがわかります。例えば、先進国は国内の重要ポストに女性を起用するなどの改善を見せていますが、発展途上国では「女性蔑視」が色濃く残る状況です。

この章では、発展途上国で現在も続く「児童婚」「女性器切除」「人身売買」の3つの問題について取り上げます。

児童婚の強制

バングラデシュやアフガニスタンのような発展途上国では強制的な「児童婚」が頻繁に起こっています。児童婚は18歳未満の女児が結婚をすることで、12歳や13歳で出産を経験する女児も少なくありません。

児童婚は女性の就学のチャンスを奪うだけでなく、妊娠・出産による妊産婦死亡のリスクを高めることがデータとして判明しています。世界では約7億5000万人の女性が18歳未満で結婚をし、そのうちの3人にひとりが15歳未満で結婚を余儀なくされる状況です。

ユニセフが開催した「ガール・サミット」によると、児童婚を経験した女性の42%は南アジア、26%が東アジアと太平洋地域、17%がアフリカで暮らしています。

参考:日本ユニセフ協会

女性器切除の風習

女性器切除はアフリカや中東の一部の国で続く悪しき風習の1つで、国際的にFGMと呼ばれます。女性器切除は女性の純潔を維持することを目的としていますが、処女性を重要視する男性の欲望がそうさせるという指摘があります。

実際、FGMを受けていない女性との結婚を敬遠する男性は多く、自分の身内からFGMを勧められるケースも少なくありません。FGMは大量出血や感染症のリスクが高いため、FGMが原因で命を落とす女性もいるのが現状です。

参考:NHK web特集「女性器切除の痛み」

人身売買のまん延

人身売買は脆弱な立場にある発展途上国の人々をターゲットにすることが多く、強制労働や臓器売買を目的に取引されています。2018年国連薬物犯罪事務所が発表したデータによると、被害者の68%が成人女性、26%が女児で、ほとんどが性的搾取を目的とした人身売買でした。

米国国務省が2011年から2018年にわたって調査した「人身売買の深刻度(図2)」を見ると、最悪な状況にある段階3に指定されたのは赤道ギニア・エリトリア・イラン・北朝鮮・リビア・イエメンの6カ国という結果になりました。

図2 人身売買の深刻度 
出典:「Gloval News View」

SDGs5を取り巻く現状(日本)

2021年2月、元東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏の発言が波紋を広げました。森氏の発言はジェンダー平等を目指すSDGs5の取り組みを妨げるもので、世界中から批判を浴びる結果になったのです。

実は、日本は2020年に発表された世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」(図3)において、121位(152ヵ国中)という残念な数字を叩き出しました。2020年代に入った現在「男性が働いて女性は家を守る」といった風習が残っているのは日本の欠点と言えます。

図3 世界のジェンダーギャップ指数 
出典:「共同参画 2020年3・4月号 内閣府男女共同参画局」

ジェンダーギャップ指数について詳しく知りたい方はこちらのESG記事も合わせてご覧ください。

ここからは、政治と雇用の2側面から、日本の男女格差について見ていきます。

女性の政治参画の遅れ

日本はジェンダーギャップ指数で121位となりましたが、特に点数を下げた原因として「政治参画の遅れ」が挙げられます。2020年2月の時点で、衆議院議員に占める女性の割合は9.9%(図4)と低く、世界191ヵ国中165位に位置づけています。

図4 国会議員に占める女性の割合(世界)
出典:「IPU及び各国の議会・選挙管理委員会作成資料」

メキシコの48.2%やフランスの39.5%と比較すると日本女性の政治参画がどのくらい遅れているのかが理解できます。今後は2016年に施行された女性活躍推進法をどのように活かしていくかが鍵になるでしょう。

女性の非正規雇用の割合増加

2020年8月マイナビが女性の正規・非正規雇用についての調査結果を発表しました。データ(図5)によると、女性就業者のうち非正規雇用で働く女性の割合は48.5%となり、男性(16.8%)の約3倍となっています。

図5 女性就業者の就業形態(20代~50代)
出典:「PR Times」

女性の非正規雇用者増加の理由として「育児」が挙げられ、子供が幼稚園・保育園入園のタイミングで正規雇用から離れる女性が多いと推測されます。今後は育児との両立を企業がサポートする形作りが必要になるでしょう。

SDGs5達成のための企業の取り組み事例

SDGs5への取り組み方は企業によって異なりますが、性別に関係なく能力によってチャンスを平等に与える企業が増えているようです。この章では企業がどのようにSDGs5に取り組むべきかを事例を通じて見ていきましょう。

ベネッセコーポレーション

参考:「Benesse サステナブルな社会へ」

佐川急便株式会社

参考:「SAGAWA モーダルシフトの推進」

パナソニック株式会社

参考:「Panasonic 100Thousand solar lanterns project」

   「Panasonic 100Thousand solar lanterns project カンボジア」

まとめ

今回はSDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」について概要や現状を解説しました。SDGs5のターゲットにある通り、世界では女性蔑視の傾向がまだまだ強いです。

ジェンダー問題と言うと女性に関係のあることと興味を示さない男性もいますが、ジェンダーは男性に起因する問題が多く存在することを自覚するべきでしょう。日本がジェンダーギャップ指数において上位に食い込むには古き慣習を見直すことが大切かもしれません。

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