カーボンフットプリントとは?家庭の数値例やCFP認証の取得方法を解説

Environment(環境)
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カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリント(Carbon Footprint)は、直訳すると「炭素の足跡」になります。

カーボンフットプリントとは、商品やサービスの原料調達から輸送、購入、消費、廃棄、リサイクルまでの一連のライフサイクルの中で排出されるCO2の量のことです。個人など、とある主体が消費する資源のライフサイクル中CO2量を指す場合もあります。

日本国内では、国が実施したカーボンフットプリントを商品に表示する制度が製品、サービスを対象としているため、 カーボンフットプリントという言葉は上のように製品のカーボンフットプリントを意味する場合が一般的です。

一方、国際的にはカーボンフットプリントは商品やサービスだけではなく、個人や組織のCO2排出量を意味する言葉として使用されることもあります。例として、「家庭のカーボンフットプリント」は家庭で消費される資源の生産や廃棄に伴うCO2排出量を指します。

エコロジカルフットプリントとの違い

カーボンフットプリントとよく似た言葉として、エコロジカルフットプリントがあります。

エコロジカルフットプリントとは、一人当たりの人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な土地や海洋の面積に換算して評価したものです。

例として日本のエコロジカルフットプリントは4.3ha/人ですが、これは一人の消費物の生産や廃棄物の処理に4.3ヘクタールを要する、という意味になります。

エコロジカルフットプリントとカーボンフットプリントは両方とも人間活動の環境への影響を定量的に評価している点では共通していますが、カーボンフットプリントは資源の使用の中でも特に化石燃料の燃焼によって放出される温室効果ガスに焦点を合わせている点が、エコロジカルフットプリントとは異なります。

カーボンフットプリントの目的・意義

カーボンフットプリントの目的は、カーボンフットプリントを商品に表示するCFP制度を運用するCFPプログラムのホームページに以下のように記載されています。

事業者と消費者の間でCO2排出量削減行動に関する「気づき」を共有し、「見える化」された情報を用いて、事業者がサプライチェーンを構成する企業間で協力して更なるCO2排出量削減を推進すること。「見える化」された情報を用いて、消費者がより低炭素な消費生活へ自ら変革していくことを目指します。

引用元:CFPプログラム

この文章から、カーボンフットプリントには、環境負担に対しての生産者側消費者側の両側の行動変革を目的としていることがわかります。

生産者側は、自社の生産活動のどの箇所が環境負担の大きい活動であるのかを自らの手で把握するのは非常に難しく、SDGsやESG経営が叫ばれる中でCO2削減を具体的な行動変革に落とし込むのは困難です。そこでカーボンフットプリントの導入によって環境負担の内訳が明確化されれば、企業は環境負担のネックを特定し、その削減に努めることができるようになります。

一方で消費者側には、商品ごとの環境負担の大きさを把握できない問題点があります。そこでカーボンフットプリントを導入すれば、消費者がCO2排出量の小さい商品を選択できるようになり、個々人が環境負担の小さい生活を選択できるようになります。

家庭のカーボンフットプリントの例

モダンなキッチン, 家庭用器具, クッカー, 食器洗い機, ディスプレイ, ボタンスイッチ, 金属

JCCCA(Japan Center for Climate Change Action:全国地球温暖化防止活動推進センター)が行なっている家庭部門における二酸化炭素の排出動向の調査によると、1世帯あたりのカーボンフットプリントは4150kgCO2/世帯にも上ります。

燃料種別の排出量とその割合は以下の通りです。

燃料種排出量
(kgCO2/世帯)
割合
電気193846.7%
ガソリン100824.3%
都市ガス3538.5%
灯油3498.4%
LPG1914.6%
ゴミ1834.4%
水道791.9%
軽油501.2%
合計4150100%
出典:JCCCA「家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」

この表から、家庭のカーボンフットプリントの内訳の大半を占めているのはは電気ガソリンです。 電気は使用場面でCO2のイメージはありませんが、発電過程でのCO2排出とその使用量の多さから、都市ガスや灯油といった他の燃料よりも環境にかける負担が大きいことがわかります。

このように、カーボンフットプリントは燃料のイメージと実際の環境負担には差がある場合にその差を明確にしてくれます。

また、使用用途別のCO2排出量とその割合を示したものが、以下の表になります。

用途排出量
(kgCO2/世帯)
割合
照明・家電製品128230.9%
自動車105825.5%
暖房64715.6%
給湯56913.7%
キッチン2125.1%
ゴミ1834.4%
冷房1202.9%
水道791.9%
合計4150100%
出典:JCCCA「家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」

CFP認証マークとは?

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CFPマークは、カーボンフットプリントによってCO2排出量を可視化した製品の中で、一定基準を満たす製品に付与されるマークです。

CFPマークの導入は、経済産業省を中心とした4省庁合同で2009年度から2011年度までの3年間、試行事業として実施され、その後は社団法人産業環境管理協会が引き継ぎ、CFPプログラムとして運用されています。

 このCFPプログラムには多くの企業や団体が参画し、最終的には73個のPCRが認定され、460の製品(サービスを含む)がCFP認証済みとなりました。

CFP認証マークを導入するメリット

CFPの導入メリットは多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下のようなことが挙げられます。

  • サプライチェーンにおけるCO2排出量の内、排出量の多い箇所を把握し、対策・改善することができる
  • 環境への意識の高い消費者にCFPマークを見せることで、商品が選ばれやすくなる
  • 温暖化対策への取り組みを発信することができるため、 環境への取り組みをはじめとした持続的な開発を期待する投資家からの投資を受けることができる/企業価値が上がる

特に三つ目のメリットに関しては、近年環境対策を始めとした持続的な経営を行う企業に投資をするESG投資の流れが加速しているため、今後ますます大きくなると考えられます。

 ESGに関して詳細が知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

CFP認証マークを取得した商品の例

カーボンフットプリント算定・表示試行事業において、CFPマークの使用が許諾された商品例は以下の通りです。

  • 上級森の香り ロースハム(日本ハム)
  • 上級森の香り あらびきウィンナー(日本ハム)
  • トップバリュ ごはん 200g(イオン)
  • ポテトチップス コンソメパンチ(カルビー)
  • カンロ飴(カンロ)
  • サラダうす焼き(亀田製菓)

CFPマークを取得する方法

CFP認証マークを取得するには、以下の手順を踏む必要があります。

プロダクトカテゴリルール(PCR)の認定を受ける

ライフサイクルは商品の種類によって異なるため、まずは製品毎のカーボンフットプリントの算定ルールとなる「カーボンフットプリント製品種別基準 (CFP-PCR:Carbon footprint of a Product- Product Category Rule)」を策定し、CFP-PCRの認定を受ける必要があります。

 ただし申請したものと同カテゴリの製品のPCRが存在する場合は、それを利用することもできます。

CFP-PCRに基づいてデータ収集をし検証申請を提出する

PCRが用意できたのちに、その算定ルールにしたがって必要なデータ収集を行い、CFPの検証申請書を事務局に提出します。

この検証が実行されてレビューパネルの審査に合格すれば、マークの使用が認められます。

なお、CFPプログラムの申請は2020年3月をもって終了しています。

日本でカーボンフットプリントをめぐる動き

日本でのカーボンフットプリントの始まりは2009年に遡ります。

試験段階として、経済産業省をはじめとした4省庁が2009年〜2011年の3年間で「カーボンフットプリント制度試行事業」を開始しました。2012年4月からは社団法人産業環境管理協会が国の事業を引継ぎ、CFPプログラムとして運用を開始しています。

カーボンフットプリント検証は2020年3月31日を持って新規申請受付は終了していますが、カーボンフットプリント宣言認定製品は2020年10月時点で1708件あり、これらは全て2025年3月末まで社団法人産業環境管理協会のサイトで公開されます。

この登録公開企業には、シチズン時計株式会社や株式会社日立製作所、富士ゼロックス株式会社など

この登録公開企業には大手企業も多数登録されています。企業例としては、以下の通りです。

  • アシックス
  • イオン
  • サラヤ
  • 凸版印刷
  • リコー
  • シチズン時計
  • 日立製作所
  • 富士ゼロックス

カーボンフットプリントの問題点

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日本でカーボンフットプリントの大きな問題点として指摘されているのが、費用対効果の低さです。

カーボンフットプリントの目的は企業側と消費者側両方の行動変革を起こすことですが、特に消費者側の視点で効果が低いと考えられています。

その理由は、カーボンフットプリントが一般の消費者に浸透しきっていないからです。CFP認証マークのついた商品は、市場に数百点しか出回っていないため、マークを認知している消費者はほとんどいません。

一方でCFP認証マークの取得にはPCRの策定を始めとした莫大なコストがかかるため、かけたコストが効果を上回ってしまう場合も考えられます。

また、消費者が商品を選ぶ基準は環境負担だけではありません。価格、味、パッケージなど様々な基準があるため、CFPマークの表示でどの程度購買を促せるのかに疑問の声も挙がっています。

カーボンフットプリントには活用の余地がある

課題はあり、現在はCFPの申請も停止しているものの、企業や消費者がCO2を可視化するためのツールとしては、カーボンフットプリントはとても分かりやすい基準であり、まだまだ活用の余地があります。

実際にイギリスでは環境負担の小さい企業活動を行ったり物を買うことが低炭素社会を実現するという考え方が浸透しており、カーボンフットプリントも一定の成功をおさめています。

日本でも今後適切に広めていけば、今後の持続的社会実現の1手段として、より活用されるようになるかもしれません。

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