クリーンエネルギーとは?注目される理由とその種類・取り組み事例を解説

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クリーンエネルギーとは?

クリーンエネルギー温室効果ガスの1つである二酸化炭素(CO2)や大気汚染物質の硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)を排出しないエネルギーのことです。

地球温暖化や資源の枯渇が懸念される時代に、環境に負荷をかけない「クリーンなエネルギー」として注目されています。

クリーンエネルギーといえば、太陽光や風力で作ったエネルギーが有名ですが、CO2を出さないという条件なら原子力もクリーンエネルギーに含まれるのではという考え方があります。

しかし、原子力は発電時に放射性物質を排出するため、クリーンエネルギーに含んでよいのかと疑問視する声も多いです。

このようにクリーンエネルギーという言葉はきちんと定義されず、曖昧な使われ方をよくされます。そこで一般的にクリーンエネルギーは再生可能エネルギーと括りを一緒にして説明されることが多いです。

似ている言葉との違い

環境問題が世の中で取りあげられるようになって大分経ちますが、テレビや新聞ではクリーンエネルギーとよく似た言葉をよく見かけます。

「再生可能エネルギー」や「自然エネルギー」、「新エネルギー」など説明を見ないと違いがわからない言葉ばかりですが、実はこれらの言葉は共通している部分が多い言葉なのです。

クリーンエネルギーと再生可能エネルギーの違い

クリーンエネルギーと再生可能エネルギーの違いは「資源」です。再生可能エネルギーは永続的に利用できる資源、クリーンエネルギーはCO2を排出しない資源から作られています。

そのため原子力はクリーンエネルギーに含まれますが、再生可能エネルギーには含まれません。「環境保全のためのエネルギー作り」という目的は同じですが、考え方が違うのです。

再生可能エネルギーは以下のように定義されています。

太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの

資源エネルギー庁

クリーンエネルギーと自然エネルギーの違い

クリーンエネルギーと自然エネルギーの違いは「原子力を含むかどうか」です。自然エネルギーは「太陽光や風力、地熱など自然から得られるエネルギーのこと」で、化石燃料と異なりエネルギーのもとが無限に循環しているため、枯渇の心配がないとされています。

自然エネルギーは再生可能エネルギーとほぼ同義として扱われ、特に自然エネルギーの電力をグリーン電力と呼びます。

クリーンエネルギーと新エネルギーの違い

クリーンエネルギーと新エネルギーの違いは「原子力の有無」と「示す範囲」です。わかりやすく言うとクリーンエネルギーという「四角」の中に新エネルギーという「丸」が存在していると考えて下さい。

新エネルギーは以下のように定義されています。

「非化石エネルギーのうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、その促進を図ることが非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なもの」

資源エネルギー庁

つまり数多く存在するクリーンエネルギーの中で、特に必要なエネルギーが「新エネルギー」です。新エネルギーは太陽光発電・風力発電・バイオマス発電など10種類が指定されています。

クリーンエネルギーが注目される理由

クリーンエネルギーを利用した社会づくりが注目されるには主に3つの理由があります。

  • ・温室効果ガスを排出しない
  • ・純国産エネルギーである
  • ・経済の活性化や雇用の増加が見込める

クリーンエネルギーの活用は環境だけでなく、経済にも関係しています。

温室効果ガスを排出しない

クリーンエネルギーは地球温暖化を抑制するために重要な役割を担っています。それはCO2を始めとする温室効果ガスを排出しないからに他ありません。

普段の生活で異常気象を感じ取ることができる世の中になってきましたが、このまま化石燃料に依存したエネルギー環境でいると2030年までに平均気温が1.5℃上昇するとされています。

私たちが心地よい暮らしを送るためにはクリーンエネルギーの活用は必須になっています。

純国産エネルギーである

クリーンエネルギーは国内の自然を利用して得られるエネルギー、つまり純国産エネルギーであることが大きなポイントです。

石油や石炭といった資源が乏しい日本はエネルギーの原料を輸入に頼ってきました。しかし、日本国内でエネルギーを生成することができれば、世界の社会情勢に依存することのない国家体制の構築が可能です。

経済の活性化や雇用の増加

クリーンエネルギーの発展は経済の活性化や雇用の増加を促します。クリーンエネルギーは大都市よりも地方で多く作られることが予想され、地方の発展に伴う国内の経済活性化が期待できます。

太陽光発電や水力発電を新しい事業とする企業の参入も見込まれるため、雇用も必然的に増加する見込みです。

クリーンエネルギーの種類

クリーンエネルギーと呼ばれるエネルギーはたくさんありますが、代表的なエネルギーと言えば次の通りです。

代表的なクリーンエネルギー

  • ・太陽光発電
  • ・水力発電
  • ・風力・地熱・バイオマス発電
  • ・原子力発電

太陽光発電

太陽光発電はソーラーパネルを利用して太陽光を電力に換える発電のことです。太陽光発電は企業だけでなく個人での参入も可能で、蓄電池を利用すれば、停電が起きたときに自家発電ができるというメリットもあります。

現在ではパネルの設置費用も安くなり、メンテナンスをしっかりこなせば比較的手の出しやすいエコ活動と言えます。

水力発電

水力発電は水の位置エネルギーで発電機を回す発電のことです。日本は四方を海に囲まれており、河川も多いので水力発電は力を入れやすい分野です。

ですが、従来の水力発電は大きなダムが必要で、ダム建設は環境破壊に当たるのではという意見からクリーンエネルギーに含まないとされてきました。

最近は農業用水や下水処理場を利用した中規模・小規模の水力発電が話題にあがり、環境への負荷も少ないことからクリーンエネルギーの1つに数えられています。

風力・地熱・バイオマス発電

風力発電は風の力を利用してブレードを回し、ブレード内の発電機を使って電気に変換する発電のことです。物を燃やす工程がないので、CO2は発生しません。

地熱発電は地熱によって発生する蒸気を利用してタービンを回す仕組みで、工程内でCO2が排出されることはありません。火山の多い日本は地熱発電の資源を世界で3番目に多く保有しています。

バイオマス発電は間伐材や可燃ごみを燃焼させ、得た熱エネルギーでタービンを回す発電のことです。ゴミや木材を燃やすときにCO2が出ますが、カーボンニュートラルの観点から環境の保全はできています。

日本は開けた土地が少ないため、風を利用するのに広大な土地が必要になる風力発電を発展させることは難しいですが、資源さえあれば24時間365日発電できる地熱やバイオマス発電は発展させることが可能です。

原子力発電

原子力発電はウランを核分裂させて熱エネルギーを得る発電のことです。原子力発電は発電効率や発電コストが優れているため、長年日本のエネルギーの中心を担ってきました。

しかし事故が起きた場合のリスクや副産物である放射線物質の廃棄方法を巡って、脱原発を唱える声が大きくなっています。

クリーンエネルギーに関する国内の現状

日本はクリーンエネルギーを使った脱炭素社会を目指していますが、現状クリーンエネルギーが占める発電量割合は全体の19.2%に留まっています。

19.2%のうち、クリーンと呼んで良いのか疑問視されている原子力が6%大規模水力が5.8%を占めている状態で、純粋に再生可能エネルギーと呼べる割合は7%ほどです。

毎年少しずつ再生可能エネルギーの割合が増えているとは言え、この数字は世界に目を向けても低い値になっています。

例えば、ドイツは日本と同じく化石燃料に長年頼ってきましたが、2017年時点で再生可能エネルギー27.7%クリーンエネルギー30%超を実現しました。

スペインやイタリア、イギリスといった欧州の先進国も軒並み再生可能エネルギー25%超えを達成しており、日本のエネルギー移行の遅さが際立っています。

資源エネルギー庁「日本のエネルギー エネルギーの今を知る20の質問」より
http://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2017.pdf

クリーンエネルギーに関する日本の取り組み

日本にとってクリーンエネルギーを利用した電力確保は急務になっており、エネルギーミックス2030と題した国の目標では、2030年までに再生可能エネルギーの割合を22~24%にすると発表しました。

再生可能エネルギー22~24%の内訳は次の通り

  • ・太陽光発電 7%
  • ・風力発電    1.7%
  • ・水力発電  8.8~9.2%
  • ・地熱発電  1.0~1.1%
  • ・バイオマス発電 3.7~4.6%

この目標を達成するため日本では企業があらゆる取り組みをしています。

企業の取り組み①:ESPEC社の事例

例えば、ESPEC社では高信頼性太陽電池パネルの開発を進め、発電効率の向上とコスト削減を目指しています。太陽光発電に欠かせないソーラーパネルは設置費用の割に寿命が短いことが問題の1つでした。

しかし、ESPEC社はソーラーパネルの割れや劣化を確認する信頼性試験を突破し、ソーラーパネルの長寿化に成功しました。今や太陽光発電は建物だけでなく電気自動車に組み込まれる時代になり、ESPEC社はその時代の先端を走っています。

企業の取り組み②:J-POWER社の事例

J-POWERではバイオマス燃料と石炭を混ぜて使用することで、CO2排出量の抑制を目指しています。バイオマス燃料と石炭を混ぜて発電することを混焼発電と言い、発電コストの削減にもつながる発電方法です。

バイオマス発電の主な燃料である間伐材や可燃ごみをそのまま燃焼させた場合、1kWhあたり29円かかりますが、混焼発電なら1kWhあたり14円程度で済みます。

現在、バイオマス燃料の混焼率は20~25%とされ、J-POWERではさらなる混焼率の向上を目指しています。

このような企業の取り組みは世界にも評価され、RE100(事業運営を再生可能エネルギーですべてまかなうことを指針とするイニシアチブ)に日本企業が参加することもめずらしくなくなっています。

クリーンエネルギーが抱える問題点

環境に優しいクリーンエネルギーですが、日本の全てを補うにはまだまだ問題点があります。以下の3つの問題点をクリアした場合、国内に占めるクリーンエネルギーの割合は飛躍的に伸びる可能性があります。

クリーンエネルギーの問題点

  • ・発電コストが高い
  • ・安定した発電が難しい
  • ・電力系統の不足

発電コストが高い

発電コストが高いことがクリーンエネルギーの普及を鈍らせている原因の1つです。2021年現在、2014年に試算された再生可能エネルギーの発電コストから大分安くなったものの、原子力や火力に比べるとコストが高くなっています。

クリーンエネルギーを普及させるためには、原子力や火力の2~3倍かかるコストを同等になるくらいまで引き下げる必要がありそうです。

出典:発電コスト検証WG「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告(2015年5月)

安定した発電が難しい

クリーンエネルギーの中でも地熱やバイオマスは燃料があれば24時間365日稼働できます。しかし、太陽光発電や風力発電は天候に左右されやすいため、継続した発電が難しいとされています。

太陽光を集めるソーラーパネルや風力を活かすブレードは基本的に野外に設置されるので、雨による劣化がさけられません。定期的なメンテナンスにコストがかかってしまうことは問題点の1つです。

電力系統の不足

電力系統の不足がクリーンエネルギーの普及を妨げる原因の1つです。日本では同じ送電線を各エネルギーで奪い合うときに、安定供給ができるエネルギーを優先するという市場原理が働きます。

日本のエネルギーは今のところ原子力や火力が安定して電力供給できるため、クリーンエネルギーは送電線を確保するのが難しい立場にあります。

クリーンエネルギーを利用した優しい社会へ

この記事では「クリーンエネルギーとは何か」から始まり、クリーンエネルギーの現状や問題点について説明してきました。化石燃料や原子力を利用したエネルギーからの脱却は日本だけでなく、世界共通の認識になっています。

現時点では世界に後れを取っている日本ですが、企業だけでなく個人の努力によって世界を引っ張る存在になることもできるはずです。

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