グリーンボンドとは?最新動向・メリットも解説

ESG投資
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グリーンボンド市場が今、国内外で注目されています。世界のグリーンボンド発行実績では2020年には2,699億米ドルとなり、2012年の約75倍ともなっています。国内でも2021年には1兆170億円が発行され、2014年の約30倍の規模になっています。グリーンボンドがこれほど急拡大しているのはなぜなのでしょうか。このようなグリーンボンド急拡大している国内外の動向、背景、グリーンボンド発行のメリットや今後の展望などについて、詳しく解説します。

グリーンボンドとは

グリーンボンドとは、企業や自治体などが環境改善を目的とした事業、すなわちグリーンプロジェクトの資金を調達するために発行する債券のことです。国際資本市場協会(ICMA)が2014年1月にグリーンボンド原則を策定して以降、グリーンボンドの発行が急激に増えています。

グリーンボンド原則

グリーンボンド原則は、グリーンボンド市場の誠実性を促進するためのもので、ガイドラインを通じて透明性、情報開示、報告を奨励しています。まず資金は明確に環境改善効果のある適格なグリーンプロジェクト(環境改善事業)に使用される必要があります。適格なグリーンプロジェクトとは、生可能エネルギー、省エネルギー、クリーンな運輸、汚染防止および管理、グリーンビルディングの少なくとも一つ以上に該当する事業であることが必要です。

また、発行体は投資家に対して環境面での持続可能性に関する目標や、適格プロジェクトに該当すると判断したプロセスを明示しなければなりません。さらに、調達資金の管理を透明にし、資金の使途、プロセス、管理について定期的に投資家に説明するレポーティングが求められています。

グリーンボンドの種類

グリーンボンドは、償還方法によって下表のように4種類に分けられます。

名称内容
標準的なグリーンボンド特定の財源によらず、発行体全体の現金などの
キャッシュフローを原資として償還
グリーンレベニュー債調達資金の充当対象となる公的なグリーンプロジェクトのキャッシュフローや、
当該充当対象に係る公共施設の利用料、特別税等を原資として償還
グリーンプロジェクト債調達資金の充当対象となる単一または複数のグリーンプロジェクトの
キャッシュフローを原資として償還
グリーン証券化債グリーンプロジェクトの資産を担保として、
そこから発生するキャッシュフローを原資として償還
(出典:環境省グリーンボンド発行促進プラットフォームhttp://greenbondplatform.env.go.jp/greenbond/about.html

グリーンボンドの拡大背景

グリーンボンドは今、国内外で大きく注目されています。その背景には、経済の目覚ましい発展の一方で、環境問題など人々の生活を脅かす大きなリスクに世界が直面していることが挙げられます。

SDGsの国連採択

その中で注目される出来事は、2015年9月には地球規模で取り組むべき目標である持続可能な社会の実現(SDGs)が国連サミットで採択されたことです。また、2015年12月にはフランスで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で2020年以降の気候変動対策の新たな枠組みとしてパリ協定が すべての国が参加する合意として採択され、2016年11月に発効したことも大きな影響をもたらしました。 

パリ協定採択

パリ協定では、産業革命前からの世界全体の平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持するという「2℃目標」が、世界共通の長期目標として合意されました。 この2℃目標の達成には、温室効果ガスの長期大幅削減に取り組む必要があり、民間資金を再生可能エネルギーなどのグリーンプロジェクトに大量に導入することが不可欠とされていて、そのツールの一つとしてグリーンボンドが注目されました。

グリーンボンドガイドライン策定

一方、2014年1月には、国際資本市場協会(ICMA)がグリーンボンド原則を策定しました。国内でも2017年3月に環境省が、グリーンボンドの普及・促進を図る目的で、「グリーンボンドガイドライン」2017年版を策定しました。

グリーンボンドの近年の動向

グリーンボンドの国際動向

世界のグリーンボンドの発行額の推移は下表のとおりとなっています。2020年のグリーンボンド発行額は2,699億米ドルとなり、2012年の36億米ドルに比べ約75倍に拡大しています。国別では米国が511億ドルで最大で、2位はドイツの402億ドル、3位はフランスの321億ドルとなっています。

世界のグリーンボンド発行額の推移

出典:環境省グリーンファイナンスポータル

グリーンボンドの国内動向

国内においてもグリーンボンドの発行額が増えています。下表に見るように、2020年は77件1兆170億円が発行されました。これは2014年の1件337.5億円の約30倍という急増ぶりです。

国内企業等によるグリーンボンド等の発行実績

出典:環境省グリーンファイナンスポータル

グリーンボンド調達資金の充当対象別の発行実績を見ると、下表のように当初大きな割合を占めたエネルギー分野の割合が低下し、建物や交通関係の割合が増えています。グリーンプロジェクトの広がりがうかがわれます。

グリーンボンド調達資金の充当対象別の発行実績

出典:環境省グリーンファイナンスポータル

ここからは発行体別にグリーンボンドへの取り組みを見ていきます。

東京都がグリーンボンドを発行
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自治体で大きな動きを見せたのが、東京グリーンボンドを発行した東京都です。2017年度からスタートし、2020年度には発行額が300億円となりました。東京グリーンボンドによる調達資金は、東京オリンピック関連の競技施設の環境対策やスマートエネルギー都市づくりにおける太陽光発電設備の設置、上下水道施設の省エネ化、環境にやさしい都営バスなどに充てられています。

大手企業中心にグリーンボンド発行が活発化

民間企業では大手企業を中心にグリーンボンドの発行が活発化しています。トヨタファイナンスは2019年に900億円を調達しました。電動車のトヨタ販売店向けの融資などが中心です。日本電産も同年に1,000億円を調達し、電気自動車向けモーターなどの開発に充てています。セイコーエプソンは2020年に700億円を調達し、高環境効率商品、環境適応商品などの開発・生産に充当しました。

グリーンボンドの傾向として、利率が高いことが挙げられます。普通預金の金利が0.001%程度に低迷している中で、グリーンボンドの利率は0.2%以上が多く、中には中日本道路の0.894%、大和証券オフィス投資法人の0.6%といったものも見られます。

グリーンボンドのメリット・デメリット

このように急拡大しているグリーンボンドですが、その理由として発行体や投資家を引き付けるメリットがあることが挙げられます。

グリーンボンドのメリット

グリーンボンドメリットについて、発行体、投資家、環境面の各メリットを見てみます。

発行体のメリット

企業などの発行体にとってグリーンボンドのメリットは、近年関心の高まっている気候変動への適応や天然資源の保全など持続型社会への取り組みに積極的であることをステークホルダーにアピールでき、企業イメージアップに有効なことです。

また、グリーンボンドを発行することによってサステナビリティ経営の高度化、体制整備につながること、地球温暖化などの環境問題の解決につながる投資対象を高く評価する投資家と新たな関係を築くことで資金調達が強化できることなどのメリットがあります。

投資家のメリット

投資家にとってのメリットは、持続可能社会に貢献できるグリーンプロジェクトを支援していることをアピールでき、それによって社会的な支持が得られることが期待できます。また、グリーボンドは株式や債券などの伝統的資産の代替的投資(オルタナティブ投資)の側面があり、分散型投資によるリスク削減のメリットがあります。

環境面のメリット

環境面では、民間資金がグリーンプロジェクトに導入されることによって地球環境保全に貢献でき、エネルギーコストの低減や地域活性化が図られるなどのメリットがあります。

グリーボンドのデメリット

一方、グリーンボンドにはデメリットもあります。デメリットの一つは、調達した資金の使途がグリーンプロジェクトに限られることです。その資金の使途については、厳しく管理されることになっています。

しかし一方で、その資金がグリーンプロジェクトに用いられない場合に投資家が救済される保証がありません。これは、 グリーンボンド原則が自主的なガイドラインであり、強制力がないためです。

グリーンボンドの今後の見通し

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急拡大してきたグリーンボンド市場ですが、今後も市場の拡大が期待できるのでしょうか。その見通しを探ってみます。

グリーンボンド市場は2035年までに4.7~5.6兆ドル

「持続可能な社会の実現(SDGs)」と低炭素経済への移行は、実現しなければならない世界共通の長期目標となっています。

経済開発協力機構(OECD)がまとめた推計によると、2035年までにグリーンボンドの債券市場は4.7~5.6兆米ドルに達すると予想されています。これは、2020年の世界のグリーンボンド発行額の17~20倍になります。(出典:https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/green-bond-market-poised-to-take-off-in-next-two-decades-says-oecd-japanese-version.htm)

2019年3月6日には、欧州委員会が欧州連合(EU)グリーンボンド基準案を公表しており、 今後世界のグリーンボンド市場に浸透していく可能性が大きいと見られています。(出典:http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2019/2019spr05web.pdf)

日本においても、約160兆円もの年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では、グリーンボンドへの投資を本格化させるとしています。

米国のパリ協定復帰で加速

このような動きに加えて、トランプ前大統領からバイデン大統領へと政権が交代した米国がパリ協定に復帰したこともグリーンボンドの今後の展開にとって好材料です。中国もCO2排出量削減に積極的な姿勢を見せており、世界で温暖化効果ガス排出量が1,2位の中国と米国が温暖化効果ガス削減に取り組むことで、国内外で今後一段とグリーンボンド市場が拡大していくことが予想されます。

まとめ

グリーンボンドは、持続可能な社会構築への世界的な意識の高まりとともに、近年、市場の拡大が顕著となっています。グリーンプロジェクトの推進ツールとして注目されています。

グリーンボンドはグリーンプロジェクトに使途を限られた資金調達ですが、企業イメージのアップ、サステナビリティ経営の高度化などの効果が期待できることから、日本でも大企業などが原資獲得の手段として活用するようになっています。

グリーンボンド市場は債券市場全体から見ればまだまだ小さな規模ですが、持続可能な社会構築への動きがさらに強まると見られることから、今後も市場の成長が期待されます。

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