SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」とは?企業の取り組み事例まで徹底解説

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世界全体を見ると、途上国と発展国の間に所得や資産の格差が深刻化しています。また国家間だけでなく国内でも様々な格差が拡大しています。SDGs10は「世界中から不平等をなくそう」いう目標を掲げていますが、ゴールとして見据える2030年に向けて達成状況はどうなっているのでしょうか。

SDGs目標10が必要となった世界や日本の現状、企業が行っている実際の取り組みを解説します。

SDGsとは?

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。つまり、日本語で言うと「持続可能な開発目標」という意味になります。2015年9月にニューヨークで開催された、国連持続可能な開発サミットでSDGsが採択されました。

SDGsは15年後の2030年をゴールとして、17の開発目標と169のターゲットで構成されています。

SDGsの17個の目標やターゲットは相互に関係しているため、SDGsのロゴは輪形で表されています。一つの目標に取り組むことが他の目標を実現させることに大きく影響するのです。

さらにSDGsについての詳しい解説はこちらをご覧ください。

SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」とは?

SDGsの目標10では人々の間や国家間での不平等に関する課題が取り上げられています。貧困を減少させるだけでなく、今なお拡大している所得の格差を改善することが目標の一つです。

人間としてまともな生活を送るための能力を身に着ける機会の不平等、性別や年齢、人種などを理由とする差別などはSDGs10を達成するうえで妨げとなっています。

SDGs10を構成する10個のターゲット

SDGs10は7つのターゲットと3つの実施体制に関するターゲットで構成されています。

近年、高所得層と低所得層の格差が多くの国で拡大しており、2017年の貧困層が持つ資産の割合は世界全体の資産の10%に過ぎませんでした。

豊かな富を持つ人たちの資産がますます増える一方で、貧しい人たちは十分な食事が取れない、学校に通えない等の様々な困難が生じているため、SDGsにより2030年までに世界の不平等を是正することが求められているのです。

以下にSDGs10のターゲットを紹介します。

10.12030年までに、各国のなかで所得の低いほうから40%の人びとの所得の増え方が、国全体の平均を上回るようにして、そのペースを保つ。
10.22030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。
10.3差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。
10.4財政、賃金、社会保障などに関する政策をとることによって、だんだんと、より大きな平等を達成していく。
10.5世界の金融市場と金融機関に対するルールと、ルールが守られているか監視するシステムをより良いものにして、ルールが、よりしっかりと実行されるようにする。
10.6世界経済や金融制度について何か決めるときに、開発途上国の参加や発言を増やすことによって、より効果的で、信頼できる、だれもが納得することのできる制度を作る。
10.7計画にもとづいてよく管理された移住に関する政策を実施するなどして、混乱がなく安全で、手続きにしたがい責任ある形の移住や人びとの移動をすすめる。
10.a開発途上国、特にもっとも開発が遅れている国ぐにに対して、世界貿易機関(WTO)協定にしたがって、貿易において、特別な、先進国と異なる扱い※をする。
10.bもっとも開発が遅れている国や、アフリカ諸国、開発途上の小さい島国、内陸の開発途上国などの、もっとも資金を必要とする国ぐにへ、それらの国の計画にそって、政府開発援助※や直接投資などの資金が流れるようにする。
10.c2030年までに、移住労働者※が、自分の国にお金を送る時にかかる費用が「送る金額の3%」より低くなるようにし、「送る金額の5%」を超えるような費用がかかる送金方法をなくす。
出典:日本ユニセフ協会「SDGsCLUB」

なぜSDGs10が必要になったのか

SDGsの掲げている17の目標を達成するためには「だれ一人取り残さない」世界を実現することが必要です。豊かな資産を持つ、世界人口の1%のためだけに経済が成り立っている状況は平等ではありません。

SDGsは格差問題を含めた地球規模での様々な課題に取り組んでいます。しかし、現在でも貧困層にある何億もの人々を取り残しながら世界は回っているため、SDGs10「人と国の不平等をなくそう」が必要になったのです。

SDGs10を取り巻く現状

「人や国の不平等をなくそう」というSDGs10が必要になった背景には世界の不平等な現状があります。日本も例外ではありません。では、SDGs10を取り巻く現状について解説しましょう。

SDGs10を取り巻く現状【世界編】

まず、世界で見られるSDGs10を取り巻く現状について解説します。

富裕層に有利な経済の仕組み

資本主義や出自によって待遇が異なるという世界の現状が、富裕層に有利な経済の仕組みを作り出しています。

実際、2008年に起きたリーマンショックをきっかけに、億万長者が増加しましたが、2015年の時点で世界人口73億人のうち、約10%の7億3,600人が貧しい生活を送っています。つまり、富裕層と貧困層の格差が生じているのです。

また、2018年に世界で生み出された総資産の80%以上が、世界人口のたった1%を占める富裕層の手に渡っているというデータが発表されています。その結果、毎日の食事を十分にとることすらままならない貧困層の人たちが困難な状況に置かれています。

例えば、繊維産業の輸出入で成長しているバングラディシュ。縫製業に多くの人が従事していますが、所得の格差が「ラナ・プラザ」の崩落事故で明らかになりました。

「ラナ・プラザ」の事故は、死者1,100人以上、負傷者約2,500人という大事故であったため国際的に注目を集めました。その事故の原因は、なんと劣悪な労働環境や安すぎる時給にあったのです。

事故で犠牲になった人の多くは、スラム出身を理由にして差別を受けたり、貧困家庭出身の弱い立場を利用して労働者にとって不利な条件をつきつけられていたため、どんなに働いても貧困から抜け出せない状況にありました。

このように、富裕層はさらに資産を集め、貧困層は貧しい状況が続くという世界の現状を解決するためにSDGs10の達成が必要なのです。

性別による格差

性別により就業率や賃金が異なる格差は対策が練られ、ゆっくりではあるものの徐々に改善されてきています。しかし「アンペイドワーク」つまり家事・育児・介護などの無償労働を女性に押し付ける傾向があり、世界的にまだ関心を持たれていない課題となっています。

また、女性が男性よりも長時間働いているということも性差の現状と言えるでしょう。オックスファムの発表によると、途上国では女性が一週間に働く時間は90時間になることがあるようです。

宗教や伝統によるしきたりが関係する性差は、人々の認識を変えることが困難な課題ですが、政策や支援により世界の不平等を少しずつ改善していくことが求められています。

SDGs10を取り巻く現状【日本編】

不平等は日本においても見られます。SDGs10を取り巻く日本の現状についても解説しましょう。

ひとり親世帯の貧困率が高い

日本では、2018年に厚生労働省が報告した分析結果によると、平均的な生活水準と比較して貧しい状態、つまり相対的貧困に陥っている世帯は全体の15.4%でした。

特に、日本のひとり親世帯の貧困率は高く、ひとり親かつ親が就業している場合の相対的貧困率は2016年のデータで54.6%でした。子どもがいるために正規雇用してもらえない、配偶者がいないため適切な養育費をもらえないといった理由で、ひとり親世帯の半数近くが貧困に苦しんでいるのです。

ジェンダー・ギャップ指数が低い

「経済・教育・政治・保健」の4分野で男女の不均衡を数値化したものをジェンダー・ギャップ指数といいます。2020年のランキングによると、日本のジェンダー・ギャップ指数は149か国中110位となっており低い数値を出しています。

なかでも経済と政治のジェンダー・ギャップ指数は低く、問題視されています。出産や子育てで女性が仕事を離れるケースが多いため、非正規雇用が推奨されており、役員や管理職に占める女性の割合は海外に比べると非常に低いのです。

SDGs10達成のための企業の取り組み事例

日本の企業も、SDGs10「人や国の不平等をなくそう」という目標を達成するために取り組めます。実際に企業が行っている取り組み事例をいくつか紹介しましょう。

企業事例1:アートコーポレーション株式会社

アート引越センターでは、「働きがいのある環境づくり」を目指してSDGs10の目標達成に貢献する取り組みを行っています。特に性差是正に影響を与える取り組みが「女性活躍推進プロジェクト”Weチャレンジ”」です。

このプロジェクトは女性従業員で推進され、性別にかかわりなく働きやすい環境を女性主体で考え、実行することで働きやすい職場づくりが行われています。

アートコーポレーションは子育てサポート認定企業でもあり、保育事業面では次世代育成支援対策推進法に基づいた企業として認められている企業です。

企業事例2:株式会社トランスアクト

株式会社トランスアクトでは、雇用給付金と再就職給付金を導入することによりSDGs10の取り組みを行っています。

雇用給付金制度の対象となる特定の労働者を雇い入れた場合、職業紹介事業者から紹介証明書の発行を受けることにより、雇用給付金の支給を受けることが可能です。また、従業員が離職する場合、有料職業紹介事業者に依頼して再就職支援に成功した場合に「再就職給付金」を受けることができます。

株式会社トランスアクトは求職者や離職者を含む、あらゆる労働者の就業機会を公正かつ公平に与えるために動き、雇用の格差を是正しています。

企業事例3:株式会社スタイル・エッジ

株式会社スタイル・エッジは知的スペシャリストとトラブルを抱える方をつなぐ役割を果たすことにより、SDGs10のターゲットの一つである知的格差の是正に取り組んでいます。

例えば、住宅ローンを支払えなくなり不動産関連の問題を抱えている人たちの課題解決を図るために総合的な不動産コンサルティング事業を展開しています。

また、基本的な知識から実際的なお悩み解決法を取り上げたメディアを運営することによって専門家や専門機関の正しい情報に一般の人々もアクセスできるようになっています。

企業事例4:株式会社マネジメントサポート

SDGsの目標達成に向けて、株式会社マネジメントサポートはグローバル化と人手不足を解決するためにダイバーシティ化を促進しています。

例えば、男性管理職を対象に研修を行い、ダイバーシティに向けた意識転換を行ったり、女性活躍を推進するマネジメントの実現を行っています。また、全社員を対象に人材育成、意識改善のための研修を行っている企業です。

性別だけではなく、あらゆる価値観において多様な人材を活用するために、教育と土壌づくりを行っています。人材育成において管理職の行動と意識改革を推進しSDGs10の達成に貢献しているのです。

NGO事例:LOOB JAPAN

NGO LOOB JAPANでは、SDGs10の「出自に関係なくすべての人々のエンパワーメント、社会、経済、政治の促進」というターゲットにコミットし、次のような事業を行っています。

  • 途上国における生計支援
  • フェアトレード
  • 途上国における教育・医療支援
  • 語学ボランティア
  • 物資寄贈
  • 被災地支援
  • ノンフォーマル教育

本来は日本とフィリピンの子ども、社会人が交流を通じて友好親善を深め、地域を発展させることが団体の目的です。一方的な支援ではなく、ともに成長し教育・環境・雇用の課題を解決し、SDGs10の達成進捗に貢献しています。

SDGs10は企業に対しても積極的な参画が求められている

世界的な不平等をなくそうというSDGs10が日本企業とどう関係しているのだろう、と感じるかもしれません。しかし、格差をなくす動きは一般企業に対しても積極的な取り組みが求められています。

女性や障害者に対する差別をなくし、均等な採用・昇進・賃金を図ることや、女性が起業する企業のビジネスパートナーとなることなどがSDGs10の達成に貢献できる方法です。

非正規社員と正規社員の格差が生じている企業が多いため、均等待遇を促進することで経済格差の是正に取り組めます。

企業の中で不平等が見られていないか気を配り、意識改革を行うことがSDGs10の目標達成に貢献し、世界の不平等をなくす動きにつながっていくでしょう。

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