2050年問題とは?30年後の日本の姿と今できることを解説

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2050年の世界は今より生きづらい社会になることが予想されています。「最悪のシナリオ」ともいわれる2050年問題。世界の変化や日本の姿はどうなるのでしょうか。2050年問題に備えて今からできることはないのでしょうか。

2050年問題の概要を紹介します。30年後の日本をより良いものにするために企業が注目できることがあります。解決策につながる、3つの今のうちから備えられることについて解説します。

2050年問題における世界の変化とは?

IEP(シンクタンク経済平和研究所)が2020年9月にまとめた報告書によると、2050年には世界の地球環境問題が悪化し、世界人口の10億人以上は避難民として暮らすことになると予想されています。

地球温暖化による気候変動を背景に自然災害の頻度は増えており、今後増加の一途をたどる可能性が高いことを考えると、今は安定している国においても2050年までには水や食料不足のなどの状況が悪化するリスクがあります。

また、世界の人口が増えていくにつれ資源をめぐって争いが起こり、2050年までには10億人以上が避難民として移住を迫られる可能性が高いのです。避難民が流入する先進国でも社会的・政治的な影響が及び、対応能力を超えてしまうと考えられています。

2050年問題の日本の姿とは?

世界では人口増加に伴う2050年問題が懸念されていますが、日本の姿はどうなるのでしょうか。日本の2050年問題として次の3つが予想されます。

  • 超高齢社会になり働ける人口が減少する
  • 地球温暖化が進みあらゆる弊害が生じる
  • AI化により人が働く場を失う

漠然とした将来の不安を抱えるよりも、具体的な日本の2050年問題を知ることは、早めに備えをして解決策を練りだすために重要です。では、3つの2050年問題について説明していきます。

問題1:超高齢社会と人口減少

厚生労働省が平成29年に推計した人口の年次推移データによると、2045年には高齢化のピークが訪れ、65歳以上の人口が最大になります。その後、2050年には日本人口が10,000万人を切り、減少の一途をたどると予想されています。

出典:「日本の将来推計人口(平成29年推計)の概要」

人口が減少するだけでなく、全人口の4割を65歳以上の高齢者が占めているため、労働力となる人口が少ない超高齢社会となるのです。2050年の人口ピラミッドを見てみると、若者よりも高齢者の人口が多い日本社会になるということが分かります。

出典:「人口ピラミッド|国立社会保障・人口問題研究所」

超高齢社会になると認知症患者が増加や社会保障費の増大などが予想されます。若者が少ないため労働力は不足し、税収が減少し、国家の財政破綻につながりかねません。

また、人口のほとんどが都心部に集中し地方の人口が大幅に減少するともいわれています。地方で働く人が不足し、農家が減少し、過疎化が進むのです。

問題2:進む地球温暖化と環境問題

地球温暖化が進み、気候変動が起こることによる問題もあります。専門家らは2050年の夏は47度になると予想しています。さらに、地球温暖化による気温上昇に伴って降水の頻度が変化することで干ばつの影響を強く受けて、深刻な水不足や食糧問題が起こると考えられています。

2050年問題として日本で起こる環境問題には家余りやインフラの老朽化もあります。野村総合研究所のレポートによると、2040年には新設住宅着工戸数が41万戸にまで減少すると予測されているのです。

出典:「株式会社野村総合研究所 2020~2040年度の新設住宅着工戸数」

今から30年後には現在建てられている住宅の老朽化が進み、住民がいなくなります。高齢化が進み、税収が急減することによって地方自治体は機能できなくなり地方の消滅も考えられます。

高度成長期に整備されたインフラが老朽化していくにもかかわらず、維持管理に必要な税金を集めることができず、2050年には非居住地となる地域も出てくることでしょう。

問題3:AI化による雇用減少

アメリカの学者カーツワイルが「2045年にはAIが人間の知能を超える」唱えたため、2050年にはほとんどの仕事がAI化されると予想されます。AIが人間の仕事を行うようになると、大量の失業者が生まれます。

コンビニやスーパーでのレジスタッフ、銀行員や配達員、タクシードライバーなど様々な仕事がAI化されることで働く場所がなくなってしまうのです。労働力となる若者の人口が減少することを考えると一見良い進化であると思えますが、AI化は格差社会を生み出します。

人工知能ではどうしても替えの効かない職業があるからです。2050年までにはAI化によって職を失った人とAI化できない職業に就いている人との間に貧富の差が生じると予想されています。

日本の2050年問題に備えて今できる3つのこと

超高齢社会や労働力人口の減少、インフラの老朽化による地方の消滅など、今から備えなければならない2050年問題。30年後の日本の姿を少しでも良いものにするために必要な変化とは何でしょうか。

2050年問題の解決策につながる、3つの今できることについて解説します。

医療技術を進化させ健康寿命を延ばす

2050年問題である超高齢社会が生じると、介護や医療の需要が高まるため医師の労働環境は苛酷になります。労働力人口は減少傾向となるため、病院数や医師数が必要数に足らず、需要と供給のバランスは崩れてしまうことでしょう。

そのため、2050年問題が生じる前に医療技術を進化させ、高齢者でも労働力として活躍できるよう健康寿命を延ばす必要があります。

高齢化によって予想される疾病を予防し、再生医療やバイオテクノロジーを使った高度な医療によって早期発見・治療を行えるようになれば寿命と健康寿命の差をなくし、2050年問題と言える医療現場での人手不足を解決できるのです。

もちろん、在宅医療の推進や介護制度の見直し、医療の機能見直しなども一つの解決策ですが、健康寿命が延びなければ介護を必要とする高齢者が増える一方ですので問題の先送りになってしまうといえます。

コンパクトシティによるインフラ老朽化のストップ

2050年問題における「高齢化」は人間だけでなくインフラにも起こります。生活するために欠かせない社会資本である水道管、道路、電線などの老朽化が進み、人間の高齢化と相まってインフラ整備が難しくなると予想されています。

そこで、都市を持続させ効率化を図るための解決策として考え出されたのがコンパクトシティです。

郊外への拡大を抑制し、都市の中心市街地を活性化させることによってインフラ整備が必要な範囲を集約できます。人が生活する都市の規模が縮小されればコンパクトなインフラで済むのでインフラの老朽化を放置せずに済むのです。

その際には、SDGsの達成のために努力し、貢献している地方自治体や都市が中心となるでしょう。

リカレント教育を活発にする

健康寿命を延ばし、インフラの老朽化をストップできれば超高齢社会となる2050年の日本でも経済を回していくことは可能です。高齢層の労働力も受け入れる点で注目したいのはリカレント教育

リカレント教育とは、知識は技術を得るために教育と就労を繰り返すことです。医療技術の進化によって健康寿命が延びれば、働く期間も伸びることになります。AI化などの時代の変化に伴って必要な知識や技術は大きく変わるため、大人になっても学び続ける機会を増やす必要があるのです。

リカレント教育を活発にして、何歳になっても教育と就労を繰り返すことは2050年問題の解決策ともいえる生涯現役として活躍できる社会につながります。

エネルギー問題は2050年までに解決するのか

生活に欠かせないエネルギーをどこから供給するのかという問題は今なお議論を続けています。

温暖化対策として2050年を目標とした「パリ協定」が発行されていますが、国家間のエネルギーを巡る競争や地政学的なリスク、不確実なエネルギー政策が不安をあおります。ですから、日本を含む世界中の2050年問題としてエネルギーの未来についても考えることは重要です。

日本はエネルギー自給率が非常に乏しいため、中東に依存しています。2050年に向けて人口減少するためエネルギー需要量が増大し続けるとは言えませんが、安定したエネルギー供給は今後も長期的に要求されます。

老朽化の一途をたどる、今充実しているインフラや日本の技術力の高さを踏まえたうえで、2050年までにあらゆるエネルギーシステムの脱酸素化を目指し、資源供給国や新興国との相互関係を構築することが重要です。

2050年問題に向けた社会の改革が必要

2050年問題に備えて労働力の寿命を延ばすことは、企業にとって重要です。超高齢社会の中で、学び続ける高齢者の人材を受け入れることも頭に入れておかなければなりません。

環境問題や医療・介護問題など不透明な2050年問題は数多くありますが、30年後の日本の姿を少しでも良いものにするために今できることを企業として検討していくことは、未来の日本を背負っていくうえで役立つでしょう。

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