SDGs目標1「貧困を失くそう」とは?企業の取り組み事例まで徹底解説

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2015年にSDGsが提唱され、持続可能な開発が行われるための17の目標が定められました。目標の内容は多岐に渡りますが、その中で国際的な問題である貧困の解決を目指すものが目標1「貧困をなくそう」です。

今回はSDGsの17の目標の1つ目「貧困をなくそう」について、世界の現状や企業の行なっている取り組みを解説していきます。

SDGsとは?

SDGsとは持続可能な開発目標のことで、「Sustainable Development Goals」の略称です。

近年経済発展に伴い環境や社会への負担が顕在化する中、それらの課題を解決して持続可能な社会を実現するための17の目標と169のターゲットがSDGsでは定められています。

また、2016年から2030年の15年間にこの目標とターゲットを達成することを2015年9月に国連サミットで採択されました。

SDGsの目標1「貧困をなくそう」とは?

SDGsが定義する貧困とは、「1日1.9ドル未満(日本円に換算すると約198円未満)で生活をしている人々のことをいいます。

この条件に当てはまる貧困層を2030年までに0にすることが、SDGsの目標1の主な内容になります。

また各国の貧困の定義に当てはまる人の数を半減させることなどもこの目標には含まれており、SDGs1では多角的な観点で貧困が消滅することを目指していると言えます。

SDGs1の7つのターゲット

SDGsの各目標には、それを達成するための具体的な指標であるターゲットが定められています。

SDGs1に定められたターゲットは以下の7つです。

1.12030年までに1日1.9ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.22030年までに各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にあるすべての年齢の男性・女性・子供の割合を半減させる。
1.3各国において最低限の基準を含む、適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層および脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.42030年までに貧困層および脆弱層をはじめ、すべての男性および女性が基礎的サービスへのアクセス・土地およびその他の形態の財産に対する所有権と管理権限・相続財産・天然資源・適切な新技術・マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.52030年までに貧困層や脆弱な状況にある人々の強靭性を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やそのほかの経済・社会・環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国・地域および国際レベルで貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
出典「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説」

また、1.1に明記される貧困の定義は、当初は1日1.25ドルで生活している人が対象でした。しかし2015年10月に1日1.9ドルに引き上げられています。

貧困が原因で起こる問題

貧困が原因で起きる問題は多岐にわたり、かつ命にかかわるような深刻ものが非常に多いため、貧困は早急に解決すべき問題であるとされています。

ここからは、貧困が原因で起きる問題点について、それぞれ見ていきます。

問題1:医療が受けられない

貧困層は医療費や薬代が払うだけの所得がないため、医療を受けることができません。そのため重病を治療できないのはもちろんのこと、軽症の治療も行えないためそれが悪化するような事態も起こり得ます。

この問題を解決するために、国際医療機関では治療が難しい貧困地域の人々のために無料で診察を行っています。しかし治療の供給に対しての患者の数が多いため、全員に治療が行き届いていないのが現状です。

問題2:教育が受けられない

貧困層の人たちにはまともな教育が受けられない人もいます。世界では義務教育がない国もあり、お金がないと学校に行けないケースも多いためです。

教育ボランティアを始めとした支援活動で識字率を中心に教育の最低水準は改善しているものの、未だ読み書きができない子供たちは大勢います。

教育が不十分だと、安定した仕事につくことができず、貧困層出身の子どもが再び貧困になる負のスパイラルが起こってしまいます。

問題3:生活費を稼ぐために幼いうちから働かされる

貧困層は生活していくために雇用を得る必要があります。その立場を、小さい子供でも低賃金できつい肉体労働を課せられる人が大勢います。

立場が弱いことから、女性は売春を強要されることも発展途上国を中心に起こっています。

問題4:差別される

貧困層は貧乏が原因で社会的に孤立する、また周りから差別的待遇を受けることもあります。

この問題は日本でも起きていることで、早急に対応策を取る必要があります。

問題5:内乱が起きる

貧困層は常に苦しい生活環境に身を置いているため、待遇改善を求めて国への不満が爆発し内乱が勃発する場合があります。

貧困になってしまう主な要因とは

世界中で問題となっている貧困問題ですが、貧困が起こる要因とは何でしょうか?

ここからは貧困が起こる要因を4つに分けて解説していきます。

要因1:失業

貧困の一番の原因は、雇用を獲得できないことです。

現在世界では1.9億人の失業者がおり、また毎年340万人が新たに失業するという統計データが出ています。

また、近年はコロナウィルスによる不景気に連動する形で消費の冷え込み、それに伴う雇用の悪化により職を失うケースも増えています。

要因2:病気

貧困の大きな原因として、病気を患うことで仕事を失うケースが考えられます。

貧困層は十分な医療が受けられていないため疾病確率が高く、重篤な病気になる人の割合が多いです。その結果仕事もままならなくなり貧困になってしまいます。

要因3:離婚

離婚してひとり親家庭になると、1人で生活費と養育費を賄わなければいけなくなり、厳しい生活を強いられてしまいます。

離婚した場合慰謝料をもらうことはできますが、最近は父親側も生活が厳しく、慰謝料を払わないケースも多いです。

要因4:自然災害

地震や火事などといった自然災害が原因で、生活に必要なものを全て失ってしまい、貧困になることもあります。

特に発展途上国であれば自然災害に耐えうるだけの十分なインフラが整っていない地域も多いため、一度の災害でライフラインを失い貧困層が大量発生してしまうエリアもあります。

SDGs1を取り巻く現状【世界編】

ここからはSDGs1「貧困を失くそう」を取り巻く世界の現状を見ていきましょう。

現状1:世界人口のおよそ10%はまだ貧困層

SDGsで定義された貧困に当てはまる人口は、世界人口の10%にものぼります。

つまり10人に1人が貧困層で、7億人を超える人々が飢えで苦しんでいることになります。

現状2:貧困層は南アフリカや中東地域に多い

上記の貧困層は世界に点在しているわけではなく、特定の地域に集中しています。特に南アフリカや中東地域には貧困層が多く存在します。

それぞれで貧困が発生する原因は少し異なり、南アフリカでは差別による貧困、中東地域では紛争による貧困の発生を中心に、解決できていない現状があります。

現状3:中国やインドなどの新興国も貧困層は多い

中国やインドなど、急速に経済が発展している国でも、経済格差の広がりにより貧困層が増加しています。

経済発展しても企業経営者が利益の大部分を得る資本主義では末端の労働者の給与が上昇しないこともあり、経済発展が貧困層の解消につながらない場合もあるのです。

現状4:先進国もホームレスが増えている

一見貧困とは無縁と思われている先進国でも、貧困は問題になっています。実際先進国にも一定数のホームレス人口が存在します。

その原因はリーマンショックや、新型コロナウィルスによる倒産や解雇によるものです。

SDGS1を取り巻く現状【日本編】

ここからは、貧困問題を取り巻く日本の現状について見ていきましょう。

衣食住もあり義務教育のおかげで識字率100%の日本では、生活水準が高く貧困とは無縁であるように思えます。

一方で国民内での所得格差の大きさを示す相対的貧困率は非常に高い現状があります。

出典:「厚生労働省『国民生活基礎調査』を用いた貧困率の推計」

先進国の日本でも、所得格差をはじめとした格差問題は健在であることがわかります。具体的に見ていきましょう。

現状1:相対的貧困率が経済大国の中で高い

相対的貧困とは、その国の生活水準や文化水準と比較して困窮な状態のことをいいます。日本は相対的貧困率がG7の中で2番目に高く、相対的貧困層の割合が高い国となっています。

「OECD経済審査報告書2017年」では相対的貧困の割合は16%で、約6人に1人は相対的貧困に該当します。

出典:「OECD (2017g)、OECD Income Distribution (データベース)」

ひとり親家庭が増えてきた

ひとり親家庭が増えてきた要因は、上記の「貧困が起こる要因」で解説した通り、離婚や配偶者との死別が多いです。

出典:「厚生労働省(ひとり親家庭等の現状について)」

特に親権の問題から母子家庭が多く、子育てと仕事の両立も難しくなり、正社員になる割合が父子家庭より低い傾向のため、収入も少なく貧困になってしまいます。

所得格差の問題

日本は資本主義国家のせいで、どうしても経営者と労働者に所得の差が生まれてしまいます。中には経営者が利益を独占して、労働者には安い給料しか払わない企業が問題になっています。

出典:「OECD Society at a Glance 2014」

現在月10万円で暮らしている人も増えてきて、デフレの影響で1日生活していくのがやっとというのが現状です。

SDGs1達成のために企業ができることは

日本を含めた世界中で貧困が問題になっている中、SDGs1を達成することで企業側は困っている人々を助けている会社だと、世界中にアピールできるとても良いチャンスなのです。そこでこちらでは、SDGs1達成に向けて企業ができるものを紹介します。

寄付をする

赤い羽根基金海外国連UNHCRなどさまざまな支援団体があるので、寄付を行うことでSDGs1目標達成に向けて実行している企業だと、周囲から好印象を持たれやすくなります。

まずは社内に向けて、自社はSDGs1の目標達成するために動いていることをアピールするために、営者自らが寄付をしてみるのも良いでしょう。

ボランティア活動を行う

貧困で苦しんでいる子供達の世話をするボランティアもあるので、そちらにボランティア活動を企業で行ってみるのも良いでしょう。

なおボランティア活動に行う交通費などは、会社で負担したほうが従業員に好印象を与えられやすくなるので、全額は難しくても一部負担することをおすすめします。

貧困問題を知ってもらうためにイベントを開く

周囲に貧困問題を持ってもらうためには、小さくても良いのでイベントを企画してみるのも良いでしょう。

ただし新型コロナウィルスの影響で、最近はイベントを開くのが難しくはなっています。なのでオンラインイベントや、リモートを使用したイベントを開催するのもおすすめです。

SDGs1達成のための企業の取り組み事例

SDGs1を企業が行うメリットは、社会貢献することで世界中から注目され、新たなビジネスチャンが生まれることです。

恐らく企業はSDGsを行うメリットがなければ、実行しにくいのではないでしょうか。しかし近年SDGsを取り組んでいる企業も多くなってきています。

それではSDGs1を実践している企業を4社紹介します。この記事を読んでいる事業者様も参考にしてみてはいかがでしょうか。

企業1:アースデイ東京

アースデイとは1970年に、アメリカのネルソン上院議員が4月22日を地球の人宣言したことから、地球環境を考えるイベントが始まりました。

日本では1990年を機にアースデイのイベントが行われるようになり、その運営をしている企業がアースデイ東京です。

その他SDGs1の目標達成のため実行している取り組みは、地方の生産者を支援するために、運営している食堂で地産地消や旬の食材を積極的に使用しています。

企業2:株式会社ジモティー

株式会社ジモティーは、地域の無料広告掲示板を運営している企業です。掲示板を利用しているユーザーの調査では、ひとり親家庭は約65世代ということがわかり、SDGs1目標達成のために活動を開始しました。

主な活動内容は企業から協賛した支援物資を、ひとり親家庭貧困層向けに提供しています。株式会社ジモティーだけではなく、掲示板を利用しているユーザーと一丸になって、SDGs1目標達成に向けて活動している企業といえるでしょう。

クラウドクレジット株式会社

クラウドクレジット株式会社は、世界の個人や事業者へのローンに投資を行う金融会社です。低所得者の生活向上のために、融資も行っていてSDGs1の目標達成に向けて貧困層を支援しています。

生活するのが厳しい人々には融資を受けることはありがたい反面、お金を借りることは恥ずかしいと感じてしまう人も多いです。

しかしクラウドクレジット株式会社は、そういった人々にも積極的に支援を行い注目を集めている企業です。

三承工業株式会社

全ての人にマイホームを」という企業理念を掲げ、岐阜県でSDGs1目標達成ために低価格で高品質な住宅「SUNSHOW夢ハウス」を展開している企業です。

貧困層に住宅を提供することで、自社はSDGs1の目標達成に向けて動いていると、世界にアピールすることを成功した一例といえるでしょう。

SDGs1を達成することは企業にとっても良いこと

SDGs1の目標達成は、企業にとって周囲に好印象を持たれやすくなったりと、メリットが多くあります。自社の知名度を上げるために、SDGsの目標とターゲットの達成を社内で検討してみるのもいかがでしょうか。

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