企業にはCEOやCOO、CTOといった部門責任者の役職が存在しますが、近年「CSO」という役職を置く企業が増えています。このCSOいう役職は、多くの社会問題や環境問題がおこる現代では企業にとって非常に重要な役職になっています。
今回はCSOという役職の意味、CSOを置く企業が増えている理由、企業の具体事例をご紹介します。
CSOとは?

CSOとは、最高サステナサステナビリティ責任者(Chief Sustainability Officer)の略です。名前の通り、企業のサステナビリティ戦略に中心となって取り組む役職になります。
CEO、COOなどと異なり、企業によってこの役職の呼称は異なる。
CSOを置く企業の数は1995年から2003年、2003年から2008年でそれぞれ2倍になっており、今後ますます増加することが予想されます。企業のサステナビリティを高める活動が近年重要になっていることがうかがえます。
CSOの役割
CSOの仕事は多岐に渡りますが、以下のようなものが該当します。
- 事業オペレーションや製品・サービス、調達の改善
- 経営陣とのコミュニケーションや従業員エンゲージメント、組織内部への活動報告
- 外部ステークホルターの対応、活動報告
- 課題の特定・分析およびサステナビリティ戦略の立案
CSOの業務は長期安定成長の戦略を策定することと認識されがちですが、実際の業務はサステナビリティ戦略を実行する際の組織内部や外部ステークホルダーとのコミュニケーションなどが中心になることも少なくありません。
また、上記のように活動内容が多岐にわたる上に、CSOの役割は企業のステージによって大きく変わります。初期であればサステナビリティ戦力遂行のための体制構築、進捗が生まれるにつれて戦略の策定へと移行します。
CSOが浸透してきている理由

CSOが浸透している背景には、サステナビリティが企業経営において重要であるという認識が一般的になっていることがあります。
近年、企業は短期的利益の追求ではなく、環境や社会へ配慮しながら経営を行う方が最終的には長期的な成長につながると考えられるようになってきています。
ガバナンスが甘いことで不祥事が発覚し企業価値が暴落する企業はあとを絶たず、環境や社会、ガバナンス配慮を行うことでそのリスクを回避することが長期の安定成長につながるからです。
企業のサステナビリティに寄与する環境・社会・ガバナンスの3つををまとめて、ESGと呼びます。
ESGに取り組む企業に投資するESG投資という概念の登場はCSOの浸透を大きく後押しした理由のひとつです。
2006年に国連で提唱されたPRI(責任投資原則)によってESGに取り組んでいる企業に投資すべきであるという投資原則が提唱され、それには現在世界の多くの機関投資家が賛同し署名しています。
これにより、企業のサステナビリティを維持するためのESG活動が投資を受けるために有効な手段となりつつあることも大きな点であるといえるでしょう。
CSOを導入している企業

CSOは他の役職に比べるとまだ知名度も浸透も浅い役職ですが、導入している企業はたくさんあります。日本企業でも日産自動車を皮切りに、各企業が導入を進めています。
今回はその中でも特にCSOを中心にサステナビリティに積極的に取り組む企業をご紹介します。
P&G
P&GではCSOの役職を設置し、2030年までに達成を目指すサステナビリティ戦略として「Ambition 2030」を2018年に策定しています。
その活動内容は多岐にわたり、例えばサプライチェーンでは、水やエネルギーの使用量を削減し、埋め立てする製造廃棄物をゼロにすることを目指しており、この目標は日本の3工場ではすでに達成されています。
また、原材料の透明性にも力を入れており、 P&Gグローバルではホームページで製品の原材料、選定理由、使用用途を全て公開しています。
IKEA
スウェーデンの家具大手であるIKEAは、CSOとして脱炭素化を推進する国際NGO「クラスメイト・グループ」の創始者であるスティーブ・ハワード氏を招き、企業のサステナビリティ推進を推し進めています。
具体的なアクションとしては、以下のような取り組みを行っています。
- 照明器具を全て省エネLEDへ転換
- 生産過程の化学物質使用量の削減
- FSC認証を受けた素材の使用比率の増加
- 各工場に調査員を派遣し、児童労働の取り締まり
- 女性管理職比率の上昇
CSOに求められるスキル

CSOに求められるスキルは、多岐に渡りますが、代表的なものとしては以下になります。
- 自社の事業やビジネスモデル全体の理解
- サステナビリティに対する知識・理解
- 総合的な思考力・組織構築能力
- 組織内外とのコミュニケーション能力
必要な能力は事業やサステナビリティに対する理解や知識にとどまりません。比較的新しい役職でありノウハウが存在しない問いに対して取り組む場合が多いため、柔軟に思考する能力や組織をうまくマネジメントする能力も求められるといえるでしょう。