SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは?企業の取り組み事例まで徹底解説

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日本の企業を評価する上でSDGsへの取り組みが重要視される時代になりました。今回紹介するSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」は持続可能な社会を実現させるための大切な指標です。SDGs12とは何か、どんな取り組みをすれば良いか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

SDGsとは?

出典:「国際連合広報センターHP」

SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」のことで、2015年9月の国際サミットで採択された世界共通のビジョンです。SDGsには2016年から2030年にかけて世界が達成すべき課題が17の目標169のターゲットとして記載されています。

17の目標には、貧困問題やジェンダー、環境問題など世界が抱える問題が掲げられ、先進国および発展途上国の率先した取り組みが必要不可欠となりました。先進国の1つである日本も企業レベルまたは個人レベルでSDGsに取り組むことが必要とされています。

SDGs誕生の背景

SDGs誕生までを振り返ると辿り着くのが1990年代に採択された「国際開発目標(IDGs)」です。IDGsは21世紀に向けた世界の新開発を目標とし、世界の貧困・教育を改善することが求められました。

IDGsはその後、2000年に国連ミレニアム宣言と統合する形で「ミレニアム開発目標(MDGs)」と名称を変えます。MDGsは2015年を達成期限として、8つの目標21のターゲットが定められ、飢餓や貧困問題にある程度の成果を収めました。

しかし、先進国主導の策定プロセスや発展途上国の進展が評価されないなどの問題からMDGsは見直しを余儀なくされ、2015年に新しくSDGsが誕生したのです。

SDGsとESGの違いは?

SDGsと近しい言葉にESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)があります。ESGは「企業が永続的に成長するためには環境・社会・ガバナンスの3つの観点が重要になる」という考え方で、今や企業評価に影響を及ぼす指標の1つです。

SDGsとESGの違いは、前者は「ゴール」を後者は「プロセス」を表している点です。簡単に言うと「ESGを意識した企業取り組みの結果としてSDGsに貢献できる」と説明できます。SDGsという大きな目標を達成する手段としてESGが利用できると捉えるとわかりやすいでしょう。

SDGs12「つくる責任 つかう責任」とは?

出典:「国際連合広報センターHP」

SDGs12「つくる責任 つかう責任」「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」をテーマに全11個のターゲットから構成された目標です。

つくる責任として生産者に「高品質な資源開発」や「生産過程での廃棄物抑制」が求められる一方、つかう責任として消費者も「無駄遣いの撲滅」や「リユース・リサイクルの徹底」が求められています。

日本はサーキュラーエコノミー(循環型社会)を目指して、エコラベルの利用やクローズド・ループ・システム(市場で販売した商品を使用後に回収して部品を再利用する動き)の促進を課題に挙げています。

SDGs12のターゲット

SDGsにおけるターゲットとは、各目標の実現のために達成すべき、具体的な指標として定められた項目のことです。

SDGs12のターゲットは12.1から12.8までの目的8個と12.aから12.cまでの具体的な対策3個で形成されています。SDGs12のターゲットは今後企業としてSDGs12に取り組むときの道標となるので、確認しておくことをおすすめします。今回は以下にSDGs12のターゲットをまとめました。

ナンバーターゲット内容
12.1開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる。
12.22030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.32030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、 収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。
12.42020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.52030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.82030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフ スタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境 への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
出典:「国際開発センター公式HP」

エコロジカル・フットプリントとは?

SDGs12を考える上で「エコロジカル・フットプリント」は大切なキーワードの1つです。エコロジカル・フットプリントは人ひとりが暮らす上で必要な資源を生産・廃棄するにはどの程度の土地が必要かを数値化したもので、人間の地球への依存度を知ることができます。

例えば、日本人の1人当たりのエコロジカル・フットプリント5.0ghaをバイオキャパシティ(その土地で補うことができる生物資源)の世界平均値1.7ghaで割ると地球が2.9個必要になることが判明します。

エコロジカル・フットプリントの値が大きければ大きいほど地球への依存度が高いことを意味するため世界中で数値を下げる試みが進行中です。

参考:「日本人のエコロジカル・フットプリント2017最新版」

SDGs12を取り巻く現状

私たちは生活の中で多くの資源を利用していますが、地球が作りだせる資源の量の1.5倍をすでに超えていることがわかっています。人が生活の中で利用する資源には食糧やエネルギーも含まれており、適正な量を生産・消費することが地球の資源を持続させ、現状を打破するポイントとなります。

SDGs12を取り巻く現状:世界

世界の人口は2050年になると約97億人に達すると予測されていますが、地球の資源は持ちこたえることが可能か不透明です。この章では人間が生活するための「水資源」「土壌資源」「森林資源」が現在どのような状況に置かれているかを確認していきます。

水資源の枯渇

地球は面積の約3分の2を海で覆われているため、水資源が潤沢にあると思う人も多いでしょう。しかし、図1「地球上の水資源の量」からもわかるように、私たちが今すぐ利用できる水の量は全体の0.01%しかありません。これは海水や北極・南極、地下水などを差し引いた割合になります。

つまり、地球上の水の0.01%を世界の国々で共有する必要があるわけです。この事実を念頭に置くと、発展途上国に住まう人々が生活用水に困っている状況も頷けます。今後は技術革新による海水や地下水の利用が必要不可欠になる時代が来るはずです。

図1 地球上の水資源の量 出典:「国土交通省HP」

水資源についてはSDGs14「海の豊かさを守ろう」を詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。

土壌資源の荒廃

世界の土壌資源は減少の一途を辿り、2050年には一人当たりの耕作可能地が1960年の4分の1になると予測されています。土地劣化の原因は温暖化や塩害、人口増加が挙げられ、今地球上にある土壌資源の33%はすでに劣化したと国連食糧農業機関が発表しました。

土壌資源の減少は飢餓や貧困に苦しむ約8億人の人々を直撃し、SDGs12以外の目標にも多大な影響を与えると考えられます。

参考:「農文協 世界の土・日本の土の今 2015年7月号」

森林資源の減少

地球の陸地の30%は森林で占められていますが、図2「世界の森林面積の変化」から分かるように2010年から2015年の5年間で約330万ヘクタールの森林が姿を消しました。特にアフリカやブラジルの熱帯雨林減少が顕著で、森林資源はもちろん、熱帯雨林に住まう動物にまで影響が出ています。

森林資源の減少は適正なもとで伐採が行われない「違法伐採」が大きな原因となっており、FSC認証(森のエコラベル)を活用した取り組みが急務となっています。

世界の森林面積の変化 【地域別】【1990-2015年】
図2 世界の森林面積の変化
出典:「私の森.jp 森と暮らしと心をつなぐ」

森林資源についてはSDGs15「陸の豊かさも守ろう」を解説したこちらの記事をご覧ください。

SDGs12を取り巻く現状:日本

日本は先進国としてSDGs12を引っ張っていく立場にありますが、「食品ロスの増加」「リサイクル率の低迷」が達成の足かせとなっています。

日本は世界的に話題となった「もったいない」という言葉を思い出して、資源の無駄遣いを止めることがSDGs12達成の第一歩になります。

食品ロスの増加

食品ロスは「食べ残しや売れ残り、期限間近という理由からまだ食べることができるにも関わらず廃棄される食品」のことです。日本の食品ロスは年間600万トンとされ、国民1人当たり年間で48キロの食品ロスを出している計算になります。

また、食品ロスは焼却時のCO2排出や灰の埋め立てによって環境破壊につながるため是正が必要です。食品ロスは生産者側と消費者側の両方に問題があるため、企業と消費者1人ひとりの意識を変えることが必要になります。

参考:「農林水産省 食品ロスの現状を知る」

ごみリサイクル率の低迷

日本のごみリサイクル率は19.9%となっていますが、この数値はEU諸国と比較すると極めて低いです。他国のごみリサイクル率を図3で見てみると、エコ大国として知られるドイツは67.3%、イタリアは49.8%、フランスは44.0%となっています。

図1 日本とEU加盟国におけるごみのリサイクル率(%)
図3 日本とEU加盟国におけるごみのリサイクル率(%)
出典:「資源循環・廃棄物研究センター」

日本のごみリサイクル率が低い理由は、日本が「焼却大国」だからです。日本はごみの約8割を焼却処分し、残りは埋め立てかリサイクルで対処しています。ごみの焼却率8割という数字は断トツの世界1位で、2位のノルウェーですら57%です。

国土が狭く、埋め立て地が少ないという理由も一理ありますが、香港やベルギーのような日本より国土面積の小さい国でもリサイクルできていることを鑑みると日本のごみ対策はかなり遅れていると断定できます。

ごみリサイクル率の改善には企業の取り組みが必須ですが、個人としてもポイ捨てを止めるなどの努力が不可欠です。

SDGs12達成のための企業の取り組み事例

企業としてSDGs12へ取り組むことは自社の評価を上げることにつながります。そのため、SDGs12達成のための取り組みを実施する企業が増加中です。この章では5つの企業の取り組み事例をご紹介しますので、自社の取り組みの参考にしてください。

日本コカ・コーラ株式会社

  • 1970年、自動販売機の横に容器回収ボックスを設置。業界初の試み
  • 2015年、使用済みペットボトルを再利用してペットボトルを製造する「ボトルtoボトル」を実施
  • 「いろはす天然水100%リサイクルペットボトル」を国内最大規模で展開
出典:「日本コカ・コーラ株式会社HP」

イオン株式会社

  • 2019年9月に発足した「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」に選出され、2030年を期限に食品廃棄物半減を目指す
  • 賞味期限が1年以上の加工商品を対象に賞味期限表示を「年月日」から「年月」に変更
  • 恵方巻の「食べきれない問題」を解決するためにハーフサイズの種類を13種類に増加
  • 2007年に小売業者として初めてレジ袋の無料配布を中止

※「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」はサプライズチェーン全体で食品廃棄物の半減を目標とし、世界大手小売企業11社とそれぞれのサプライヤー21社が協力して取り組む指針のことです。

株式会社永谷園ホールディングス

  • 2017年5月、全商品の賞味期限延長の可能性を検討し、75アイテムの賞味期限延長を実施
  • バイオマスプラスチック包装資材の導入
  • 需要予測の精度向上による流通在庫減・欠品防止を徹底

不二製油グループ

  • 販売余剰になった食品を再加工することで食品ロスの削減に貢献(例:余剰パンを再加工してフレンチトーストとして販売)
  • フジオイル・ヨーロッパでは油を含む廃棄物をグリーンエネルギーの原料として活用
  • 2007年に食品リサイクル率97.3%を達成して以降、毎年99%を超えるリサイクル率を維持

出典:「SDGsに対する不二製油グループの取り組み」

湖池屋

  • 生産過程で発生する食品廃棄物をリサイクルし、有機肥料や固形燃料として利用
  • 2017年の食品リサイクル率は97.2%という高水準を達成

限りある資源を利用する責任を持とう

今回はSDGs12目標「つくる責任 つかう責任」の概要や現状について詳しく解説しました。日本に住まう人々が資源の枯渇を肌で感じることは中々難しいかもしれませんが、今の生活を続ければいずれ当たり前の生活が困難になる時代が訪れるでしょう。

SDGs12への取り組みを通じて、生産者と消費者双方が「限りある資源を利用する責任を強く持つ」ことが重要です。その先にきっと持続可能な社会が開けるはずです。

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